2016年8月24日(水)
主張
あっせん利得疑惑
甘利氏の潔白証明されてない
千葉県内の建設会社と都市再生機構(UR)の補償交渉を口利きして報酬を受け取ったとして、あっせん利得処罰法違反の容疑に問われた甘利明前経済再生担当相と2人の元秘書が起訴されないことが確定しました。甘利氏の事務所は「安堵(あんど)した」などとコメントを発表していますが、国民の怒りを逆なでするものというほかありません。いったい甘利氏も事務所も、口利きの事実も多額の報酬を受け取った事実も、なかったとでもいうのか。疑惑は明白なのに処罰されないとすれば法律の欠陥であり、何より甘利氏の政治家としての責任は消えてなくなりはしません。
裁判の道閉ざした不起訴
甘利氏と元秘書がかかわった疑惑は、今年初めに週刊誌の報道などで発覚し、市民団体などが告発していたものです。甘利氏も疑惑の一部を認め、安倍晋三政権で経済再生を担当し環太平洋連携協定(TPP)の交渉にもあたっていたにもかかわらず、1月末閣僚辞任に追い込まれました。
その際は詳しい調査を約束していたのに、辞任直後から「睡眠障害」などを理由に国会を欠席し続け、姿を見せたのは参院選後の臨時国会というありさまです。その間一言の弁明もなかったのは誠実さのひとかけらもない態度です。
あっせん利得処罰法は国会議員やその秘書が民間企業などに頼まれて国などの機関に働きかけ、不当な報酬を受け取ることを禁止しており、甘利氏がかかわった今回の疑惑は、まさに典型的な口利き疑惑、犯罪行為です。建設会社から頼まれてURと交渉した元秘書が受け取った現金や接待は1千万円以上に上ります。甘利氏自身、大臣室や事務所で計100万円を受け取っていました。
市民団体などの告発に対し、東京地検特捜部は6月「嫌疑不十分」を理由に不起訴にしました。その際「国会議員の権限に基づく影響力の行使」というのは国会質問で取り上げると脅した場合などに限られるとしたのは、あっせん利得処罰法を空洞化するものです。特捜部の「不起訴」決定に対し、市民団体などが改めて市民参加の検察審査会に訴え、検察審査会は甘利氏への判断は変えなかったものの、元秘書に対しては「不起訴不当」としたのは当然です。にもかかわらず特捜部が7月末になって改めて元秘書を不起訴にしてしまったため、裁判で事実を究明する道が閉ざされてしまいました。
国会議員や秘書が国などの機関に働きかける際、国会質問で取り上げるなどとあからさまに脅さなくても、自らの政治力を誇示したり、官僚などを接待したりすることは十分推測できます。実際接待を受けたUR側の職員は処分もされているのに、甘利氏側は議員も元秘書も不起訴で済まされるなどというのは、国民の常識に照らし通用しません。地検特捜部の度重なる不起訴決定は、準司法機関としての責任を放棄したものです。
政治責任を果たさせる
もちろん司法の判断はどうであれ、疑惑が指摘されている以上、自ら説明責任を果たすのは政治家である甘利氏の責任です。甘利氏が政治活動を続けるなら直ちに説明責任を果たすべきです。
安倍政権で重要閣僚を歴任した甘利氏が疑惑解明の責任を果たさないなら、任命権者として首相の責任はいよいよ免れません。