2016年9月13日(火)
主張
臨時国会とTPP
貧困と格差拡大断ち切るため
安倍晋三政権が26日から始まる臨時国会で、環太平洋連携協定(TPP)の批准強行を狙っています。首相は先日の20カ国・地域(G20)首脳会議などでも、「自由貿易は成長のエンジンであり、保護主義の誘惑を断ち切ることが政治の責任」だなどと主張して、批准に固執しています。しかし、輸出入の関税を原則撤廃し、貿易やサービスの取引に輸出国や多国籍企業に有利なルールを押し付けるTPPは、経済を活性化するどころか国民の暮らしを悪化させ、貧困と格差を拡大することにしかならないのは明らかです。
自由貿易一辺倒への批判
世界ではいま、これまでアメリカと多国籍大企業の主導で進められてきた新自由主義的な「グローバリズム」や「自由化」が一部の大国や大企業、富裕層だけを利し、深刻な貧困と格差を拡大していることへの批判が高まっています。イギリスでは新自由主義的な「改革」を推進した欧州連合(EU)からの離脱が多数を占め、アメリカとEUの環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)にも中断を求める声が公然と上がっています。
大詰めを迎えたアメリカ大統領選で、民主、共和両党の大統領候補が、いずれもTPPに反対や慎重を表明せざるを得なくなっているのもその表れです。アメリカ国内だけでなく世界的に広がった新自由主義反対の草の根の運動が大きな力になっています。
TPPはまさにこうした国際的な批判に逆らうものです。今年2月の署名に至るTPP交渉が、合意までは一切明らかにしない異常な秘密主義をとったのも、国際的な批判を恐れたためです。交渉が、アメリカと多国籍企業の利益を代弁する経済官僚が作成したものを各国に押し付ける場だったのは明らかです。安倍政権が前国会にTPPの承認案を提出したものの、交渉経過については異常な黒塗り資料しか出せなかったのはその象徴であり、その結果国会審議はほとんど進みませんでした。
安倍政権はTPPの影響についても、すべてが日本に都合よく作用するという前提で国内総生産(GDP)が大きく伸びるとする一方で、大幅に関税を撤廃・削減する農産物への影響は極めて軽微とするごまかしの試算を発表してきました。しかし、それが偽りであることは、国内の広範な市民団体が参加した「テキスト分析チーム」や海外の運動団体などの調査によって鮮明になっています。
TPPは、農林漁業や地方経済への深刻な影響、遺伝子組み換え食品などの拡大、医薬品価格の高騰、労働条件の悪化をはじめ、国民生活のあらゆる分野に多国籍企業に有利なルールを押し付けます。国の主権を侵害するISDS(資本家対国家の紛争解決)条項の弊害も明らかです。文字通り生活を破壊し、貧困と格差を拡大します。
疑問層含め幅広い運動で
TPPに対する反対運動は、「自由貿易と保護主義とのたたかい」などではなく、アメリカ主導の「グローバリズム」や「自由化」がもたらす経済のゆがみをただすもので、広範な共同が可能です。
TPP交渉が浮き彫りにした異常な秘密主義や安倍政権の強引なやり方に疑問を持つ幅広い人々と共同し、暮らし破壊と格差拡大を許さない世論と運動を広げ、批准を阻止しようではありませんか。