2016年10月1日(土)
主張
TPP承認批准案
「早期成立」強行する道理ない
今週から始まった臨時国会の論戦で、焦点になっているのが戦争法の本格的運用や補正予算案など経済政策とともに、安倍晋三政権が承認を目指す環太平洋連携協定(TPP)の問題です。衆参本会議の代表質問に続いて衆院予算委で審議が始まった補正予算案にも、TPPの国内対策が盛り込まれています。安倍政権はTPP承認案と関連法案の「早期成立」を目指していますが、輸入米の価格(SBS価格)の偽装問題や協定の誤訳問題も次々明らかになり、アメリカでも批准の見通しが全く立たないなど、早期成立を狙う根拠は失われてしまっています。
公約にも決議にも反して
TPPは、安倍政権が国民に中身を知らせないままアメリカなどとの合意を強行した環太平洋地域12カ国の貿易協定です。関税を原則ゼロとし、サービスや投資なども自由化、食の安全や医療、雇用、保険などあらゆる分野で輸出大国と多国籍企業に有利なルールを国民に押し付けるものです。
自民党は民主党政権下の野党時代にはTPPの交渉参加に反対し、2012年の総選挙でも各地で「TPP反対」を宣伝しました。ところが安倍首相が政権に復帰した途端、選挙公約に口を拭い、交渉参加を強行しました。しかも、コメ、麦、牛肉など農産物の重要5項目は関税撤廃の例外にするよう求めた国会決議さえ踏みにじって合意を強行したのです。
合意では日本の農産物の8割以上、重要5項目でも3割近くの品目で関税を撤廃、関税が残った品目も大幅引き下げや輸入枠の拡大など無傷のものはありません。選挙公約にも国会決議にも違反した協定内容は、本来国会に持ち出すことさえできないはずです。
安倍政権は前国会にTPP承認案と国内対策の関連法案を提出しましたが、交渉経過については肝心な中身を塗りつぶした「黒塗り」の資料しか示さず、都合のよい試算で農業への影響は小さく経済は大きく増えると宣伝しました。ところが最近になって、輸入米(SBS=売買同時入札米)が公表より安く販売されていた疑惑が発覚しました。輸入米の国内販売価格は国産米と同水準だからコメへの影響はないとする政府の試算が、成り立たなくなるのは明らかです。
TPP承認案を審議する条件は失われているのに、安倍政権は日本が率先して批准し、「早期成立」させるのは、遅れているアメリカの批准を促進するためだといいます。アメリカのオバマ政権は残る任期中に批准するといってはいますが、次期大統領候補は民主党のクリントン候補も共和党のトランプ候補もTPP反対です。日本が批准してもアメリカが批准するかどうかは極めて不透明です。
平等・互恵の貿易ルールを
TPPは日本とアメリカいずれもが批准しなければ発効しません。首相は日本が批准して、まだTPPに参加していない国にも参加を促すといいますが、発効の見込みも立たないのに参加国を増やすというのも絵に描いた餅です。
TPPの承認批准案と関連法案は、根拠が崩れたまま「早期成立」に突き進むのではなく、安倍政権の責任で撤回すべきものです。TPPを強行するのではなく、食料主権と経済主権を尊重した互恵・平等の貿易・投資のルールづくりに取り組むことこそ重要です。