2016年10月8日(土)
SBS米価格偽装問題
商社の7割が「調整金」
農水省が調査結果を公表
輸入米が国産米より安く流通していると疑われている問題で、農林水産省は7日、国が実施している輸入米の入札に関する調査結果を公表しました。外国産米を輸入している商社の7割が、「調整金」などと呼ばれる金銭のやりとりが存在することを認めました。
「調整金」は輸入米の価格を引き下げる道具になっているとされます。そのやりとりの存在を認めたことで、環太平洋連携協定(TPP)の政府の影響試算に改めて重大な疑いが生じました。
農水省は今回、直近5年間に落札実績のある商社と卸売業者に聞き取りを実施しました。商社では26社中19社(73%)、卸売業者でも113社中42社(37%)が現在または過去に「調整金」や「販売促進費」などの名目で金銭のやりとりがあったと回答。「調整金」が広く慣例化していたことが明らかになりました。
農水省は、今後は「調整金」を禁止し、違反した場合は入札参加資格の停止や取り消しの措置をとることを決めました。一方で、「国産米の需給および価格に影響を与えていることを示す事実は確認できなかった」と結論。「調整金」がSBS(売買同時入札)米の価格にどのような影響を与えたかについては言及しないまま、国産米価格への影響を否定しました。
安倍首相は同日、TPPに関する主要閣僚会議を開き、「他国に先駆けてTPP協定を承認し、早期発効に弾みをつける。この国会でやり遂げなければならない」と述べました。
SBS米価格偽装問題
政府が輸入しているミニマムアクセス(最低輸入機会)米77万トンのうち、主食用として流通する10万トンは売買同時入札(SBS)方式で輸入されています。SBS方式では、商社と卸売業者の間に政府が入り、事実上の関税をかけます。安い輸入米の流入で国産米が打撃を受けることを防ぐためです。
安倍晋三政権は、環太平洋連携協定(TPP)でコメの輸入が増えても、増加分を備蓄米として政府が買い上げ、SBS方式で輸入米と国産米の価格差が無くなるので、国内農業への影響はないとしてきました。
しかし、商社が輸入価格を実際より高く偽装し、卸売業者に「調整金」の名目でリベートを渡していたことが発覚。「調整金」を道具に輸入米が国産米より安く販売されていた疑惑が生じました。