2016年10月12日(水)
論戦ハイライト
輸入米「調整金」 国家貿易の信頼崩れた
食の安全より米国優先か
参院予算委 紙智子議員
「国家貿易の信頼性が根底から崩れた。TPP(環太平洋連携協定)の影響試算をやり直すべきだ」―。日本共産党の紙智子議員は11日の参院予算委員会で、国家貿易である輸入米入札の“闇”をえぐり、国民の食の安全より、米国の言い分を優先する安倍政権の姿勢をただしました。
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国による輸入米の売買同時入札(SBS)は、コメを輸入する商社と国内卸売業者との間に政府が入り、マークアップと呼ばれる事実上の関税をかけます。国産米価格への影響を防ぐのが目的です。
しかし、実際には商社が輸入価格を高く偽装し、卸売業者に「調整金」と呼ばれる裏金を渡す行為が横行。農林水産省が7日に公表した調査では、商社の7割、卸売業者の4割が調整金の存在を認めました。
関税を無効化
紙 調整金で(SBS米の)値引きを約束して入札したのではないか。
山本有二農水相 (調整金が)入札契約と関係する場合もある。
調整金によるSBS米の値引きは、国産米を守るためのマークアップを無効化します。同時に、調整金の分だけマークアップが低く設定されていたことも意味します。
紙氏は、わずか数回の取引で調整金の額が約5千万円に上った例があると紹介。「国の収入をまけたのなら国の予算にかかわる重大問題だ」と指摘し、農水省調査で判明した調整金の総額を明らかにするよう求めました。
山本氏は「任意調査の限界もある」などと言い訳に終始。SBS米を卸売業者がいくらで市場に出したのかについても、調査していないことを明らかにしました。
紙氏は、今回の農水省の調査では、マークアップの設定が適正だったのかも、調整金の国産米価格への影響も、何も明らかになっていないと指摘。「明らかになったのは国の公の取引に闇があったということだ。肝心なことは解明されていない欠陥報告だ」と厳しく批判し、参考人質疑を求めました。
政府はこれまで、TPPで輸入米が増えても、SBSという国家貿易が維持されるから国産米価格への影響はないと説明してきました。
紙氏 調整金の存在が明らかになったことで、国家貿易の信頼性が根底から崩れた。TPPの影響試算をやり直すべきた。
安倍晋三首相 TPPに対しての影響はない。
紙氏 結論ありきだ。SBS米と競合する業務用米価格に与える影響は調べたのか。
山本氏 業務用米のユーザーに聞き取りした。
紙氏 聞き取りはしても全体像を把握していない。根拠も示さず影響なしでは納得できない。
事件繰り返す
紙氏はさらに、2008年には猛毒のカビに汚染された事故米が食用に流通し、13年には輸入米が「国産米使用」として長期に販売されていたことが発覚するなど、輸入米にかかわる事件が毎年のように繰り返されてきた問題を追及しました。
「業者が倫理観を持つよう監督したい」と責任逃れする山本氏に対し、紙氏は「民間業者のモラルも問題だが、農水省の責任が重大だ」と批判。国民の食の安全より輸入米の処理を優先したことに問題の本質があるにもかかわらず、TPPでさらに7万トンも輸入米を増やす米国との交換文書では、ほぼ全量を受け入れることになっていることを示し「いかにも米国いいなりだ」と強調。TPPの強行、拙速な批准は許されないと迫りました。
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