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2016年10月19日(水)

主張

TPPの本格審議

問題点は何も解決していない

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 安倍晋三政権が今国会の重要法案と位置付ける環太平洋連携協定(TPP)の承認案と関連法案の総括質疑が衆院の特別委員会で行われました。今国会初の本格的な審議だというのに安倍政権は18項目もの誤訳が明らかになった協定を出し直そうともせず、通常国会で審議ストップの原因となった「黒塗り」の資料もそのままです。自民党の選挙公約や衆参両院の国会決議への違反が大問題になっているのにそれさえ説明しません。日本の将来に必要だという一方的な説明や国内の農業などへの影響を過小評価したでたらめの「試算」で押し通すのは許されません。

国の在り方にかかわる

 TPPは日本がアメリカなど11カ国との間で関税を原則的に撤廃し、サービスや投資も自由化を約束、農業や中小企業だけでなく医療や保険、雇用や「食の安全」などに大きな影響を及ぼす、国の在り方を変える協定です。多国籍企業が進出先の国の制度が気に入らなければ裁判に訴えることができるISDS条項など、国の主権にとっても危険な内容です。

 自民党は2012年末の総選挙で「TPP反対」を主張したのに、政権に復帰した安倍政権はその直後に交渉参加を決めました。衆参両院の国会決議ではコメ、麦、牛肉など重要5項目は「聖域」として関税撤廃の対象から除外するよう求めたのに、合意では5項目でも3割近くの品目で関税が撤廃されます。関税が残っても無傷の品目はありません。総括質疑では日本共産党の斉藤和子議員と畠山和也議員が公約違反や国会決議違反を追及したのに、安倍首相は「国会決議については国会が判断する」などと無責任な答弁に終始しました。国会決議に違反した協定の承認を国会に押し付けること自体重大問題です。

 この間、TPPの危険性と安倍政権の問題に向き合う不誠実さを浮き彫りにしたのは、日本が輸入を続けてきたSBS(売買同時入札)米の問題です。輸入業者の買い入れ価格と卸売業者の売り渡し価格を同時に入札し、差額は国が徴収する仕組みですが、実際には輸入業者から卸売業者に「調整金」が渡されており、輸入米が国産米より安い価格で売られていた疑惑が濃厚です。農林水産省は、調査で「調整金」の存在は認めましたが、価格引き下げに使われたかどうかは確認する意思もない態度です。

 安倍政権はTPPでコメの輸入が増えても、国産米と同じ価格で売られることになっているから国内の生産に影響はないと言い張ってきました。SBS米の問題は、TPPによる国内農業への影響を小さく見せてきた政府の試算の破綻を示しています。

徹底審議すべき課題山積

 わずか2日間の特別委員会の総括質疑で、TPPの問題点は全く解消されていません。アメリカのTPP承認を促進するために日本が率先して批准を急ぐなどという説明は、全く道理がありません。

 先週末開かれた「TPPを批准させない!全国共同行動」の中央集会には北海道から九州まで全国から約8000人(主催者発表)が参加しました。世論調査でも、TPPについてわからないが多数で、今国会承認賛成は少数です。

 TPPの批准を急ぐのではなく、全容を明らかにし、徹底審議に応えることこそ政府の責任です。


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