「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2016年10月30日(日)

沖縄・高江工事仮設道

法面崩落し赤土流出の恐れ

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 沖縄県国頭郡東村、国頭村に広がる米軍北部訓練場で、日米両政府が強行している米海兵隊の垂直離着陸機、MV22オスプレイなどが使用する着陸帯(ヘリパッド)建設工事。現場では資材搬入の仮設道路などでの法面(のりめん)崩落で赤土流出による深刻な環境破壊が現実になろうとしています。(山本眞直)

 国の公共工事などで赤土流出防止工事の施工経験を持つ複数の土木関係者は「官邸の年内完成という圧力による工期短縮が目立つ。貴重な自然を破壊するヘリパッド建設は断念すべきだ」と訴えています。

連日“大名行列”

 東村高江では、“大名行列”とよばれる異様な光景が連日、繰り広げられています。砂利を満載した数十台のダンプカーを沖縄県警のパトカーが先導し、最後尾には全国から動員された機動隊車両が警備、県道70号線からヘリパッド建設予定地の北部訓練場メインゲートに誘導。そこから数台ずつの車列を警察が「N1ゲート」に再誘導します。

 ゲート周辺で「ヘリパッド建設反対」「やんばるの森を戦争のための基地で壊すな」などと座り込む県民を、屈強な機動隊が次々と排除しての進入です。

 土木関係者が力を込めます。「懸念は二つある。一つはすでに3カ所の崩落現場を抱えた仮設道路への大量な工事車両の通行、二つは仮設道路の赤土流出防止対策の『省略』で、新たな法面崩落による環境破壊の恐れだ」

 工事用車両の大量通行についてこう説明します。沖縄防衛局は当初、環境への影響を考慮してN1、H、G地区のヘリパッド工事を1カ所ずつ行うとしていました。しかし7月に急きょ3カ所の同時着工、砂利運搬は環境への配慮から工事用モノレールで行うと公表。9月にはその工事用モノレールもやめてN地区から新たに工事用道路を建設すると変更しました。

大伐採が発覚し

 一連の変更は、建設に反対する市民の情報で、現場ではモノレール工事ではなく大規模な伐採による環境破壊が発覚したことによるものです。地元紙がその現場写真を掲載、防衛局は「工事用道路」と認めました。

 現場監督の経験を持つ土木関係者が指摘します。

 「もともと地盤の弱い赤土で法面対策が不備な仮設道路などを2千台以上の車両が通れば大規模な崩落事故が起こりかねない。この危険性を沖縄防衛局、県環境保全課に訴えている」

 防衛局は工事計画書で、抑止杭(くい)や大型土のうで対処しているとしています。土木関係者がこう反論します。

 「あくまで応急処置だ。工事計画書は対策を施すのは勾配の緩やかな法面で、一度崩れたと思われる絶壁のような法面に関しては対策の対象になっていない」

土木関係者 工事簡略化を指摘

図

 土木関係者によるこうした懸念に拍車をかけているのが二つ目にあげた仮設道路工事での赤土流出防止対策の簡略化問題です。

 沖縄県赤土流出防止条例で、仮設道路工事などの造成工事で義務付けられている赤土の混ざった雨水を沈殿させる貯留施設の設置が、ヘリパッド建設工事(N1地区)では「免除」されています。

 県赤土流出防止条例は同条例5条で、地形や技術的な理由から防止施設や装置の設置が「不合理な地域」との「理由書」を県に提出し、「県知事が相当と認めたもの」についてはこれを“免除”するとあります。

 沖縄防衛局は2014年5月27日にこの理由書を県に提出。そこにはこうあります。

 「県道70号線からN1地区までの、既設道路の路面を補修する工事で、施工幅が小さく、施工延長が長いため地形上、貯水池を数カ所設けるには不合理である」

前知事が発行

 県環境部は本紙の取材に「仲井真弘多知事(当時)は沖縄防衛局の免除申請を“相当と認める”との判断で『事業行為確認済書』を14年7月10日付で発行した」と回答しました。

 沖縄防衛局の理由書には、貯水池の代わりに草刈りした路面に砂利を敷き、重機による転圧で固めるという工程が示されています。土木関係者が「省略が多く、赤土流出防止対策としてはそぐわない」と指摘します。

 「本来であれば草刈り後に表土の剥ぎ取りをする。その時点で裸地が発生するため、盛り土や切り土で法面(のりめん)を整形して砕石を敷き、転圧で固めた後に法面に種子を吹き付けして赤土流出防止対策を施す」

 しかしこれをすれば防衛局の1日100メートルの進捗(しんちょく)は無理。年内完成を公言する官邸の意向からも選択の余地はありません。

 土木関係者は「すべてではないが、工期短縮や手抜きによる法面崩落を誘発しかねない恐れを払拭できない」と力をこめます。加えてヘリパッド完成後の米軍車両の進入道路として“恒久使用”が指摘されており、仮設道路の“酷使”が懸念を強めています。

 法面崩落は赤土の大量流出につながります。

生態系を破壊

 米軍基地で赤土流出対策工事を行ってきた造園業者も力説します。「立木の大量伐採に加えて赤土流出で希少動植物の生態系は破壊され、県民の水がめである貴重な水源が汚染される。固有種で国の特別天然記念物であり、県鳥のノグチゲラなどの希少動植物が生存する世界に誇れるやんばるの森を次世代に残すために、赤土は一滴も流出させてはならないという構えが必要だ」


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって