2016年10月30日(日)
主張
TPPの国会論議
徹底審議のうえ廃案しかない
安倍晋三政権が成立を目指す環太平洋連携協定(TPP)の承認案と関連法案の審議が大詰めです。安倍政権が狙った先週中の衆院通過は実現しませんでした。国民各層と野党が反対し、世論調査でも7割以上が慎重審議を要求しているためです。しかし、安倍首相は「審議が進めば採決は当然」と早期採決をあきらめず、自民党内には11月1日に衆院を通過させ、会期が同30日までの今国会で自然承認を狙う声まであります。衆院TPP特別委員会での本格的な審議は始まったばかりです。徹底審議で問題点を明らかにし、廃案に追い込むことが必要です。
本格審議始まったばかり
国会で審議すべき問題は山積しています。関税を原則撤廃し、投資やサービスの取引も自由化するTPPは、農業にとどまらず経済と国民の暮らしに大きな影響を与えますが、安倍政権はその危険をごまかし続けています。
とりわけ農業ではコメ、麦など「重要5項目」でも約3割が関税を撤廃され重大な被害を受けます。これまでSBS(売買同時入札)米として輸入してきた主食用のコメが、輸入業者が卸売業者に「調整金」を払うことで国産米より大幅に安く売られていた疑惑が明らかになったのに、政府は「確認できない」とまともな調査さえしません。ところが日本農業新聞(24日付)や「毎日」(27日付)の調査で国産米より安く売られていた事実が明らかになり、疑惑は深まる一方です。TPPはSBS方式でコメの輸入を大幅に拡大することになっており、政府の影響試算は見直し、コメ輸入を拡大する計画は撤回すべきです。
TPPによる規制の緩和や撤廃で「食の安全」や医療・保険、共済、雇用や著作権などへの影響も重大です。安倍政権は日本の国内法などがあるから暮らしは守られるようにいいますが、TPPは貿易や投資などの障害を取り除くことが目的で、いったん緩和された規制は元に戻りません。協定で除外されていなければ、今後の交渉や「小委員会」などでの密室の合意で、譲歩が迫られる恐れがあります。輸出大国や多国籍企業の利益最優先で、多国籍企業が政府を訴えるISDS条項が盛り込まれるなど、国の主権そのものが破壊される危険な仕組みです。
12カ国で合意したTPP協定は付属文書を含め約8400ページもあるといわれるのに、国会に提出されたのは約2400ページ分と3分の1足らずです。交渉経過については一切秘密で、前国会に異常な「黒塗り」の資料が提出されただけです。説明責任も果たさず「強行採決」だの「早期採決」だのとの動きが繰り返されるのは言語道断というほかありません。説明責任を果たし、十分な審議を保障することは政権の責任です。
公約違反は不問にできぬ
もともとTPPは自民党が自らの選挙公約に違反し、国会決議も踏みにじって合意を強行したものです。このことも不問にできません。国会は国会決議違反の協定を承認すべきではありません。
アメリカをはじめ他の参加国も批准を急いでおらず、日本が率先して承認すれば発効を後押しするなどというのはごまかしです。国会での徹底審議でTPPの問題点を明らかにし、協定批准と関連法案の成立を許さない正念場です。