2016年11月3日(木)
国会軽視、利益誘導 辞任は当然
山本農水相の相次ぐ暴言
山本有二農水相が強行採決をめぐる自らの発言を「冗談」とした暴言(1日)が波紋を広げ、自民・民進両党がいったん合意した2日の衆院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会が流会になりました。暴言に野党が抗議する下で、与党は4日に特別委員会を開会し、採決を強行する構えです。
資質も資格もなし
山本氏の暴言は、10月18日の佐藤勉衆院議院運営委員長(自民党)の政治資金パーティーで自らが発した「強行採決するかどうかは、佐藤委員長が決める。そのためにはせ参じた」という暴言に続くものです。
TPPを担当する大臣自ら国会に「強行採決」を促したこの暴言を野党は厳しく追及。山本氏は同特別委員会理事会(19日)で陳謝・撤回し、「あくまでも採決は国会で決めるということを伝えたかっただけだ」などと釈明したばかりでした。
その「強行採決」暴言が「冗談だった」とする山本氏のさらなる暴言は、国会での釈明自体が本心ではなく、不誠実な発言だったことを浮き彫りにしました。国会軽視そのものです。
加えて、1日の暴言の中で山本氏は「JAの方々が大勢いらっしゃるが、明日でもこの自民党議員の紹介で農林省に来てくれたら、何かいいことがあるかもしれない」といいました。農水相自ら、農業関係者に利益誘導を働きかけるものとして看過できません。
「強行採決」暴言に加え、国会軽視の「冗談」発言、そして、国政全体を冒とくする利益誘導発言。山本氏に大臣としての資質も資格もありません。辞職は当然です。
交渉過程は不透明
山本暴言が波紋を広げ、2日の委員会採決は見送られたものの、安倍政権・与党は4日にTPP特別委員会で採決を強行する構えを崩していません。
しかし、そもそもTPP承認案・関連法案は国会審議の前提を欠いたものです。
協定関連文書の和訳が一部にとどまる問題や黒塗りだけの交渉過程の資料問題などの解明はいまだ終わっていません。今国会では輸入米の価格偽装など、解明すべき新たな問題も発覚しています。
農産物の関税撤廃の問題、食の安全や医療制度・薬価、金融・保険、中小企業など国民の身近な生活に及ぶTPPの影響、経済主権を投げ捨てるISDS(投資家対国家紛争解決)条項の問題など、特別委員会での審議を重ねるほど、協定の問題点が次々浮かび上がり、議論がようやく深まりつつあります。これらの問題について、引き続き国民の前で徹底的に審議すべきです。
安倍首相は10月31日の衆院TPP特別委員会で、「このまま無為に時を過ごせば」と答弁し、同委員会での質疑を“無為な時間”と軽んじました。
「徹底審議を」6割
しかし、共同通信の世論調査(10月29、30日実施)でも、TPP承認案・関連法案について「今国会にこだわらず慎重に審議するべきだ」との回答が66・5%にものぼっています。
慎重審議を求める国民の声にこたえるために中央公聴会を開催すべきです。これは、4月5日に同特別委員会の与野党理事が合意した約束でもあります。
安倍政権・与党が採決を急ぐのは、審議を重ねるほどTPP承認案・関連法案の問題点が浮かびあがり、国民の不安にまともに答えられないことの裏返しです。慎重審議、徹底審議こそ求められています。(山田英明)