2016年11月13日(日)

きょうの潮流

　アンダーグラウンドは地下を意味する英語ですが、裏の社会や非合法の世界を指すときにもよく使われます。表と裏、明と暗、光と影、正と負。それを対比させる形で▼暗く、じめじめし、空気も悪い。およそ人間の生活には適さない地下は死者を葬り、悪魔や怪物がすむ場所として昔から恐れられてきました。しかしいまや地下は生活にかかせない空間となり、大都市では地下鉄が貴重な移動手段になっています▼日本地下鉄協会によると現在、北海道から福岡まで全国１２都市で４５路線、総延長８００・５キロを走り、１日の利用者は１６００万人に達しています。９０年近く前に上野―浅草間で初開業して以来、日本の地下鉄は網の目のように▼福岡市のＪＲ博多駅前で起きた道路陥没事故も地下鉄七隈（ななくま）線の延伸工事に伴うものでした。天神南から博多までのわずか１・４キロを結ぶため。事故は岩盤上の水を含んだ層から大量の地下水がトンネル内に流れ込んだ可能性があります▼日本の軟弱な地盤、プールの下にトンネルを通すようなものといわれる地下水への対応。今回の事故で改めてわかったように水道、電気、ガス、電話をはじめ、ライフラインは地下に張り巡らされています▼危険はどこでも。下水管の破損が原因の陥没事故だけでも年間３３００件も起きています。何でも埋めてしまい、普段は目に見えない地下の空間がいかに過密で危ういか。ほとんどがトンネルになるリニア新幹線の建設などに血道を上げている場合ではありません。