2016年11月15日(火)
論戦ハイライト
「強欲資本主義」の“食い物”に
参院TPP特 大門氏が追及
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日本共産党の大門実紀史議員は14日の参院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会で、TPPで国内経済が成長するという政府説明のまやかしを突き、日本の経済主権が米国流「強欲資本主義」の食い物にされる危険を浮き彫りにしました。
人間無視の政府試算
政府は、TPPで国内総生産(GDP)が実質2・6%増、雇用も約80万人増え、生産性向上で賃金も上がるとしています。しかし、農業従事者がTPPで失職しても翌日には自動車産業に就職できるというような「完全雇用」を前提にするなど、机上の空論になっています。
それに対し大門氏は、「仕事探しで苦労し、見つけても低賃金という人々のつらさや苦しみ、時間の長さを一切考慮していない」と批判しました。
さらに多国籍企業が低賃金国に拠点を移し、国内でも非正規雇用を増やすなか、生産性向上による賃金上昇など起きていないと指摘。政府試算は都合のいい数字を当てはめただけだとただすと、石原伸晃TPP担当相は、「なにが客観的な状況になるのか予見するデータはない」と認めました。
大門氏は、日本の自動車企業の海外生産が増え続ける一方、国内生産は横ばいとなっていることを指摘。非正規雇用を増やしながら巨額の内部留保を積み上げていることも示し、「輸出産業が伸びても国内経済に寄与しない時代になっている」と強調しました。
安倍首相は、日本の貿易自由化が不十分だから企業が海外移転しているとし、「(TPPにより)国内にいながら域内市場に進出できるようになる。すでに海外生産の一部を国内に戻す動きもみられる」と答弁。大門氏は「日本でつくり運搬するだけでコスト高だ。そんな甘い話ではない」と反論しました。
「自主的」のまやかし
これまで安倍首相は米国から圧力を受けても「要求に屈することはない」と述べてきました。
大門氏は、郵政民営化で日本の保険が議論になった際、当時の小泉純一郎首相が「米国の言うことを聞くのではなく、自主的に判断していく」と繰り返していたと指摘。ところが、現在、全国2万の郵便局の窓口では米国の保険会社アフラックのがん保険が販売されています。
大門 日本郵政は政府所管の特殊会社。公的ネットワークを一民間企業、しかも外資に独占的に使わせるのは異常ではないか。
麻生太郎金融担当相 国内とか外資に関係なく、適正な競争が行われて国民サービスが向上していく。
大門 あまりに異常な優遇だ。この背景にもTPPがある。
大門氏は、米国通商代表部(USTR)がTPP協議の参加条件として、米国牛肉の輸入制限撤廃と、かんぽ生命のがん保険参入規制を求めてきたと指摘。米国の圧力で、かんぽ生命と日本生命との提携がご破算になったことを示しました。
際限のない規制緩和
TPPは25章「規制の整合性」で、各締約国に外国人投資家の意見を聞くための「調整機関」を設けるよう定めています。
大門氏は、日米2国間の交換文書(サイドレター)では、日本の調整機関として、解雇規制のルール緩和や混合診療解禁を求めてきた「規制改革会議」(現「規制改革推進会議」)の名前が挙げられていることを指摘しました。
サイドレターは、日本政府が米国企業に意見を求め、それを定期的に規制改革会議に付託することを明記。そのうえで「日本国政府は、規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる」よう求めています。
大門 ISDS(投資家対国家紛争解決)条項でいちいち訴えなくても、米国の多国籍企業の要望に基づいて際限なく規制緩和が広がることになる。
安倍首相 関係者の意見は聞くが、反映させるのは義務ではない。
大門氏は、特定の多国籍企業の意見を聞き、政府の政策に反映する仕組みをつくること自体おかしいと主張。「この仕組みを認めれば、外資、米国の要望が日本の政策になる」と警鐘を鳴らしました。