2016年11月30日(水)
会期延長に道理なし
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環太平洋連携協定(TPP)承認案・関連法案と「年金カット法案」などを成立させるための国会会期延長を政府・与党が強行しました。国会審議で、国民に重大な悪影響を与える問題点が次々に浮き彫りになるなか、数を頼んだ強行採決を重ねたあげくの暴挙です。TPP承認案・関連法案も、「年金カット法案」も、廃案にするしかありません。
TPP承認案
発効の見通しない中
国益譲歩重ねる危険
トランプ次期米大統領が離脱を表明したことでTPPは発効の見通しすら立っていません。そんな協定をそもそも今国会で承認・批准する必要性がどこにあるのでしょうか。
会期を延長してまでTPPを批准することは、米国に翻意を促し、TPPにとどまるよう懇願するために他なりません。この安倍政権の姿勢は、国民に大きな害悪をもたらします。
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日本共産党の田村智子副委員長は、24日の参院TPP特別委員会で、「さらに米国の要求をのまされることになる。国益や主権を自ら差し出すものだ」と指摘。日本がいまTPPを承認すれば、TPPで譲歩した線が最低基準となって、今後の交渉でさらなる譲歩が迫られる危険性を明らかにしました。
実際、安倍晋三首相は28日の参院本会議で「(承認案が成立すれば)日本がTPP並みのレベルの高いルールをいつでも締結する用意があるという国家の意思を示すことになる」と宣言。米国をつなぎとめようと、自ら最低基準を受け入れる姿勢まで示したのです。
トランプ次期米大統領はTPPの離脱をいいながら、「その代わりに公平な2国間貿易協定を進める」(21日)と言明しており、日本を最大のターゲットに譲歩を迫ってくることは明らかです。
しかも、国会審議では、TPPの中に国民の利益と経済主権を米国や多国籍企業に売り渡す仕組みが数多く盛り込まれていることも明らかになっています。日本共産党の追及で、TPP発効後、TPP委員会などの協議を通じ、いくらでも条文の解釈や内容が変わることや、多国籍企業に優位に運用されるISDS(投資家対国家紛争解決)条項の危険性なども浮き彫りになりました。
ましてや国民の多くは、会期を延長してTPPの承認を行うことなど望んでいません(グラフ)。TPP承認に前のめりな安倍政権の都合だけを優先して、国民の声に耳をふさぐのは、まさに本末転倒です。
年金カット法案
実質審議わずか3日
際限ない削減を強要
いまでも低すぎる年金給付を乱暴に削減し続ける「年金カット法案」は審議も乱暴極まりないものでした。年金制度を大転換する重大な中身をもつ法案にもかかわらず、衆院厚生労働委員会での質疑は実質3日間、審議時間は約20時間にすぎません。同委は、「年金カット法案」以外を含めて今国会の開催9回のうち7回が委員長職権によるという異常事態です。
与党は、国民の声を聞くための25日の参考人質疑の直後に委員会採決を強行。安倍首相は「私が述べたことを全くご理解いただいていないようであれば、こんな議論何時間やっても同じ」と“強行採決の予告”までしました。
同法案の実施は5年後。施行時期からいっても今国会で成立させる必要はありません。
自公政権は、年金を物価・賃金以下に抑える「マクロ経済スライド」導入など制度改悪を重ねてきました。しかし、高齢者の生活を支えるために物価に合わせて年金給付額を改定するというルールは変えられませんでした。
「年金カット法案」はこのルールを投げ捨て、物価が上がっても賃金が下がれば給付を下げるなど、現役世代の賃金に合わせて改定するようルールを大改悪。「マクロ経済スライド」の未実施分を翌年度以降に持ち越して実施する仕組みも導入して、際限のない年金削減を押し付けようとしています。
政府の「将来年金確保法案」というごまかしは完全に破綻しました。日本共産党の高橋千鶴子議員の追及に、安倍首相は「物価の伸びほど年金は上昇しない」と述べ、将来世代も年金が下がり続けることを認めました。
いまでも基礎年金は、単身高齢者の消費支出7・2万円に対し満額でも6・5万円と下回っています。そのことを追及されると、塩崎恭久厚労相は、年金だけでは生活できないことを認め、「社会保障全体で総合的に手を打っていく」としかいえなくなりました。しかし、医療も介護も負担増、給付削減が目白押しです。
道理も大義も破綻した「年金カット法案」は廃案にするとともに、安定雇用の拡大で年金の支え手を増やし、給付の増額など、減らずに安心できる年金制度へ踏み出すことこそ求められています。
どさくさで他の悪法も
カジノ解禁・部落差別永久化
安倍政権は会期延長で、海外のカジノ資本を呼び込むカジノ解禁推進法案や部落差別の固定化・永久化につながりかねない「部落差別」永久化法案(「部落差別解消推進法案」)の今国会成立を狙っています。どさくさにまぎれて悪法を押し通すことは許されません。