2016年12月28日(水)
主張
ギャンブル依存症
「対策」いうならカジノやめよ
先の臨時国会で自民、維新などが強行成立させたカジノ解禁推進法が26日施行され、安倍晋三内閣はギャンブル依存症対策を検討する関係閣僚会議を開きました。年明けには内閣官房に対策室を設置するといいます。日本は、世界最悪のギャンブル依存症被害を抱える国です。形ばかりの「依存症対策」を持ち出し、それをカジノ合法化の方便に使うのはあまりに無責任です。
被害放置してきた罪
カジノ推進派は「カジノの収益の一部をギャンブル依存症対策に充てる」と主張してきました。カジノで依存症患者を増やしながら、カジノのもうけで対策をとるという話は“マッチポンプ”と批判されましたが、安倍政権の行動はこれを地でいくものです。
厚生労働省の助成を受けた研究班は2013年、日本のギャンブル依存症有病率は成人人口の4・8%、536万人だという調査結果を公表しました。諸外国の有病率がいずれも1%前後なのに、日本はその5〜6倍の高率です。
なぜこれほど恐ろしい事態になったのか。政府も自治体も、ギャンブル依存症問題に目をふさぎ、欧米やアジア各国では当たり前になっている水準の対策も、やってこなかったからです。
ギャンブル依存症は長く、個人の道徳性や自己責任の問題ととらえられてきました。ギャンブルの提供者はこの見方に都合よく便乗し、ギャンブルの利益は自分のポケットに入れる一方、それで生じる問題は関係ないという顔をしてきました。
競馬や競輪など6種の公営賭博の胴元である農水省、経産省などの中央省庁は、公営賭博でギャンブル依存症が生じている事実そのものを認めていません。パチンコ・パチスロの大きな権益を握る警察庁も「のめり込みがあることは承知している」と人ごとのようにいうだけです。
政府は「カジノを機に包括的なギャンブル依存症対策を行う」といいますが、それならなぜ、いままで手をこまねいてきたのか。これでは、お茶をにごす対策に終わることは目に見えています。
カジノ解禁推進法は、カジノ施設の目的を「財政の改善に資する」としています。カジノを財源としてあてにするのは危険なのに、これでは国や地方自治体がますます“ギャンブル依存体質”になり、ギャンブル利用者拡大政策に乗り出しかねません。依存症対策とは相いれないことです。
カジノと絡めてギャンブル依存症対策を語るというのが間違っています。カジノが生み出す依存症を防ぐためには、カジノを日本に上陸させないのが一番です。
独自に強力に進めてこそ
多重債務、家庭崩壊、失職、犯罪、自死と、ギャンブル依存症はこの社会に多くの不幸を日々引き起こしています。それは、国の無策が生み出した被害であり、これを克服することは国の責任です。
ギャンブル依存症の実態把握、相談窓口や治療の体制整備、予防教育や広報で社会の偏見を取り除くこと、これまで野放しだったギャンブルへの強い規制など、課題は山積しています。「カジノ合法化の地ならし」という不当なやり方ではなく、独自に、強力にギャンブル依存症対策を進める必要があります。