2017年1月1日(日)
地域経済 活性化へ
「最賃1500円」熱い運動
北海道労連 共感広げる
見渡す限りの銀世界です。冬は氷点下10度、20度、30度…まで下がる北海道で、人口の流出を防ぎ、地域を活性化させる最低賃金の大幅引き上げを求めて北海道労働組合総連合(道労連)が運動を進めています。「ずっと住み続けられる街にしたい」。熱い思いは、労使の枠を超えて共感を呼んでいます。
(玉田文子)
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北海道の人口は約538万人。そのうち255万人が労働者です。非正規雇用労働者の割合は約4割です。
大学の新卒者に占める道外就職者の割合は37・4%で、道外へ就職する傾向が年々強まっています。出生数は20年間で3割減少。さらに、山形大学の戸室健作准教授の調査で明らかになった「子どもの貧困率」は、20年間で倍増し、全国で5番目に高い19・7%です。
人口流出や疲弊する地域経済の一因に、「低すぎる最低賃金がある」と道労連の出口憲次事務局長は指摘します。北海道の最低賃金は時給786円。年末年始、お盆休みなどを含む一般的な労働者の平均所定労働時間・月155時間働いても12万円程度にしかなりません。
出口事務局長は、「低い最低賃金が地域の賃金相場を引き下げ、働いても暮らせない状況を生み出しています」と話します。
このような状況を打開しようと道労連は、最低賃金の引き上げを全道で訴えています。街頭宣伝やサウンドデモ、各団体への申し入れや懇談、要請、キャラバン行動を実施。「最低賃金上げろデモ札幌」の若者とも共同して運動を盛り上げます。
求めているのは、最低賃金をいますぐ時給1000円にし、1500円をめざす大幅引き上げです。宣伝やデモでは、相手に伝わることを重視し、プラカードや横断幕は一目で要求がわかるようデザインにも工夫を凝らします。
運動に参加した青年が組合に加入するなど、各地で訴求力を高めた宣伝が力を発揮しています。
「すべての労働者の賃金引き上げにつながる大きな運動です。労働組合の力が試されます」と出口事務局長。「最低賃金引き上げの合意を、当事者や各地域でつくることが重要だ」と話します。
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北海道労連 生計費調査から「時給1500円」必要
経済団体からも賛同 「必要な中身だ」
北海道労働組合総連合(道労連)は、2015年から1年かけて生計費調査を実施し、最低賃金算定の根拠となる「労働者の生計費」を割り出しました。調査は全道で取り組み、年間270万円以上、月22万5000円以上、時給で1295円以上(厚生労働省の算定基準173・8時間で計算)が必要という結果を得ました。月155時間で換算すると1450円が必要です。
生活実態に基づいた算定額は、要求の確信となり、運動に勢いをつけています。
出口事務局長は、「額だけみると、ちょっと高いようにも見えますが、具体的に食費や被服、交際費などを示すと『それくらい必要だよね』と納得してもらえます」と話します。
この調査結果には、経済団体からも賛同が寄せられました。地方最低賃金審議会の使用者側委員は、「若者が道内で働き続けるために必要な中身だ」と納得。別の委員からも、「具体的な生活を見てみると安すぎるのではないか」との意見が出されました。
道労連は、調査結果を、各地域の商店や事業所に広げようと、懇談を予定しています。生計費調査が、共同をさらに広げる足掛かりになっています。
人口流出の要因となる最低賃金の地域間格差をなくし、全国一律の最低賃金制度実現を求める署名と合わせて取り組みます。
出口事務局長は、「地域を活性化させたいという思いは経済団体とも一致しています。各地で合意を広げて、引き上げ実現の土台を強化したい」と意気込みます。
最低賃金ってなに?
「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、労働者の生活の安定をめざして定められる賃金の最低額です。これを下回る賃金は無効となり、最低賃金額が適用されます。
調査の概要
調査は、(1)大まかな生活実態を把握する「生活実態調査」(2)生活の必需品として所有する物の種類や数を調べる「持ち物財調査」(3)所有が認められた商品やサービスの価格を調べる「価格調査」―を実施し、調査データを最低生計費試算の指標とします。
保有率が7割を超える品目について、必需品として生計費に組み入れ、費用を割り出します。
月22万5000円程度の暮らしは―。
◇札幌市白石区の1DKのアパートに住み、家賃は3万4000円。車は持たず、地下鉄を利用して通勤する。 ◇冷蔵庫、炊飯器、洗濯機、掃除機、ストーブなどは、最低価格帯でそろえる。 ◇1カ月の食費は、数回のランチや飲み会も含めて男性で約4万円、女性で約3万2000円。 ◇衣類は、男性で背広2着(約1万6000円)、女性の場合はジャケット2着(約4000円)とスカート3着(約2000円)を4年間着用するなどです。