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2017年1月10日(火)

残業月125時間→80時間に

IT職場で時短に合意

JMITUアイ・エス・ビー支部

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 IT職場の労働者でつくるJMITU(日本金属製造情報通信労働組合)アイ・エス・ビー支部は、残業時間を労使で取り決める「三六(さぶろく)協定」を見直し、月の残業時間が最長125時間だったところから、過労死ラインを超えないよう、80時間に削減することで合意しました。今年から新協定の運用がはじまります。(田代正則)


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(写真)JMITUアイ・エス・ビー支部の人たち

 アイ・エス・ビーは、東京都品川区に本社を置き、携帯端末などのソフトウエア開発、システム構築などを行うIT企業です。

 IT業界は、長時間労働の代表的産業とされています。昨年ヒットしたテレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」でも、IT企業に勤める登場人物が仕事で何日も家に帰れず、体調を崩す場面が描かれました。

 小泉隆一JMITU支部委員長は、「1988年に入社したころは月100時間以上の残業が当たり前だった。自動車に搭載された移動電話を、携帯端末へと小型化するソフト開発では、それ以上になることもあった」と振り返ります。

 柴山正人書記長は、「入社以来、長らく銀行、証券系のシステム開発を行っていたが、消費税導入など法体系の大幅な変更があると一気に仕事量が増え、残業時間が月150時間を超えることもあった」と話します。

 人間らしく働ける職場環境を整備するため、労働時間短縮に取り組もうと、旧JMIU職場支部が結成されたのは、1994年のことでした。そこから徐々に、三六協定の残業時間の上限を引き下げてきました。

労働時間の一律規制こそ

 JMITU(日本金属製造情報通信労働組合)アイ・エス・ビー支部の小泉隆一委員長は、長時間労働になりがちな仕事に「客先常駐」があるといいます。情報流出防止のため、仕事依頼のあった顧客先に、しばらく出向いて作業することがあります。急なトラブルなどに対応するうちに、長時間労働になります。

 組合は、労働時間が長くなりそうな労働者の状況把握と対策について労使交渉で協議を求め、残業が月80時間を超える労働者を減らしてきました。

 さらに、80時間という「過労死ライン」を超える長時間残業を一掃しようと、15年秋、組合側は、「現状の三六協定では今後は締結できない」と残業時間上限を引き下げるよう申し入れました。

「かとく」契機に

 思い切った時短に踏み出すきっかけは、15年4月、東京労働局と大阪労働局に過重労働撲滅特別対策班(通称「かとく」)が設置されたことでした。同年2月、日本共産党の吉良よし子参院議員が国会質問で悪質企業の社名公表を要求し、翌3月、安倍晋三首相が違法な長時間労働を繰り返す企業の社名公表を表明して、「かとく」設置に至りました。

 小泉委員長は、「うちの会社は東証一部上場企業なので、厳しくチェックを受けるようになるでしょう。先手を打って、時短を提起した」と指摘します。

 会社側も真剣に受け止め、16年秋の団体交渉で月の最長残業時間を80時間までとする三六協定に改めました。

月45時間以下に

 こうした職場の努力とは正反対に、安倍政権は「残業代ゼロ」制度を導入し、裁量労働制の対象を拡大する労働基準法改悪法案を国会提出しています。

 小泉委員長は、「いまでも長時間労働がまん延しているIT業界は、たいへんなことになる」と警鐘を鳴らします。

 JMITUでは、残業時間を大臣告示の月45時間以下にすることをめざしています。小泉支部委員長は訴えます。「多くのIT企業で長時間労働が当たり前になっているなか、自分たちの職場だけが時短をして大丈夫なのかと労働者からも不安が出てしまう。さらに時短をすすめていくため、すべての企業に対して一律の労働時間の上限をつくる法的規制こそつくってほしい」


 三六協定 労働基準法36条に基づいて、残業時間について労使で取り決めた協定。労働時間は、週40時間、1日8時間以内が原則となっており、三六協定がなければ残業させられません。旧労働省告示で、残業時間は1カ月45時間、1年360時間が限度とされていますが強制力はなく、「特別条項」を締結すれば、青天井で時間延長できる問題点があります。

 過労死ライン 厚労省通達「脳・心臓疾患の認定基準」が指摘した、過労死の危険性が高い残業月80時間のこと。ほかに疲労やストレスが蓄積する要因があれば、80時間以下でも過労死に至る場合があります。過労死ラインの根拠となった厚労省検討会では、その日の疲労がその日の睡眠で回復するには、残業月45時間までとしています。


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