2017年1月10日(火)
労組・学生 賃金・雇用の悪化懸念
フランス 改定労働法抗議は続く
【パリ=島崎桂】フランスで昨年、全国的な抗議行動を引き起こした改定労働法が順次施行されています。労働環境の悪化や不安定雇用の常態化、雇用者の権限拡大を懸念する労組・学生団体は同法の廃止を求め、引き続く行動を呼びかけています。
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同法は、解雇規制の緩和や、賃金・労働時間に関わる雇用者の裁量拡大を企図しています。同国の労働者や学生は法案内容が判明した昨年3月から、法案が成立した9月までに13度のゼネストと大規模デモを組織し、法案撤回を求めてきました。
議会採決では与党議員からも反対意見が上がり、議会多数の賛成が見込めないバルス首相(当時)は憲法の規定を3度にわたり行使し、議会採決を行わずに強行成立させました。
抗議行動を主導してきた6労組・学生団体は4日の声明で、青年雇用の拡大や労働環境の改善、賃金・労働時間に関わる「共同提案」を掲げ、「(改定)労働法に反対するたたかいを継続する」と表明。同法廃止に向けた合同機関を3月にも設立する方針を明らかにしました。
一連の改定は、労働環境の改善を図る法律も含みますが、その効果は不透明です。
今月施行された「通信機器に接続しない権利」を保障する法律は、従業員50人以上の企業に対し、勤務時間外のメール確認を強制しない環境づくりを求めています。法文は「休憩時間や休暇を尊重し、仕事と私生活のバランスを保障するため」としていますが、従業員へのメール禁止時間の詳細は定まっていません。
人事の専門家は仏紙フィガロ(4日付電子版)に対し、同法により、勤務時間内の業務が過密化し、「労働者はより多くのストレスを抱え、昼食や休憩時間を削ることになる」と警告。問題は通信機器への接続時間ではなく、企業側の命令系統そのものにあるとの見方を示しました。