2017年1月25日(水)
主張
官僚の天下り
癒着を温存した構造をただせ
文部科学省の組織ぐるみの「天下りあっせん」問題は、官僚と業界との癒着の根深さをあらためて示しました。この間、天下りに対する国民の批判の高まりを受け、公務員制度の改定などが行われてきましたが、そんなやり方では解決にならず、ゆがんだ関係を温存するものであったことを浮き彫りにしています。文科省の組織的不正は、なぜ放置されてきたのか。他省庁でも同じようなケースがあるのではないか―。疑惑は深まるばかりです。構造的問題にまでメスを入れた徹底解明とともに、天下りを厳しく禁止するための法改正などを行うことが必要です。
「自由化」した第1次政権
退職した官僚が、自ら所属した役所と関係のある業界の会社や団体などに再就職する「天下り」は、政官業の癒着の典型として厳しい批判にさらされてきたものです。
今回発覚した文科省前高等教育局長の問題は、退職前から早稲田大学へ求職活動を行い、人事課職員がその履歴書づくりなどに関与したというやり方の点でも、天下り先が前局長の仕事と密接にかかわる大学だったという点でも、極めて悪質なケースです。調査にあたった内閣府設置の第三者機関「再就職等監視委員会」に対して隠ぺい工作までしていました。
これらは在職中の職員の再就職のあっせんなどを禁止した国家公務員法に反するものです。監視委は他にも多くの違法行為があると指摘しました。文科省は事務次官の辞任、関係職員の処分とともに、省内に「調査班」を設置しました。安倍晋三政権は全省庁に実態調査を指示しました。天下りあっせん問題が、文科省はもちろん、全省庁に広くまん延している可能性をうかがわせるものです。
問われるのは、安倍政権の姿勢です。安倍首相は第1次政権の2007年、“天下りを根絶する”といって国家公務員法を改定しました。この改定では、離職後2年間は仕事と密接な営利企業に再就職をしてはならないとする条文を削除しました。天下りの原則禁止から原則自由化への大改悪です。
省庁があっせんする天下りは「禁止」するとしましたが、規制されたのは現職職員の関与だけで、内閣府に設けた「官民人材交流センター」が再就職を支援する仕組みもつくりました。「あっせんによる天下り」でなければ、自由に天下りできることを可能にしたのです。この結果、国家公務員の天下りの件数は、10年度733件だったものが、15年度には1668件へと2倍以上にもなりました。天下りの根絶どころか、野放しにした安倍政権の責任は重大です。
禁止へ向け法改正が必要
文科省の組織ぐるみの天下りあっせんは法改悪直後の09年から行われていたといわれていることは深刻です。OB職員を介した天下りも“抜け穴”になっていました。そのやり方は、これまでも国土交通省などで問題になったものです。改悪法が「あっせん」の構造を温存させた欠陥だらけのザル法であることは明らかです。
税の無駄遣いの官製談合の温床になるなど政官業の癒着を生む天下りの一掃は急務です。一連の疑惑を徹底的に解明するとともに、「再就職」を前提とするような現在の公務員制度のあり方の見直しなど、必要な法・制度の改正に踏み切ることが求められます。