2017年2月3日(金)
主張
16カ月連続消費減
賃上げで拡大に転換すべきだ
総務省の家計調査で、昨年12月の消費支出が1年前に比べ0・3%悪化したことが明らかになりました。うるう年で平年より1日長かった昨年2月を考慮に入れると、一昨年9月以降、事実上1年4カ月にわたって消費が落ち込むという異常事態です。消費が落ち込んだのでは、売り上げや生産も増えず、景気はよくなりません。これまでも再三指摘してきたように、税金や社会保障などにかかる国民負担を減らし、これから本格化する今年の春闘でも大企業のもうけや内部留保を活用して賃金を大幅に引き上げて、消費の拡大に転換していくことが急務です。
負担増と賃上げの抑制
長期間にわたる消費の低迷は、4年前に発足した安倍晋三政権による経済政策「アベノミクス」でも景気がいっこうによくならず、むしろ社会保障の改悪や消費税の増税で国民の暮らしが悪化したことを浮き彫りにしています。大企業は安倍政権の発足以前から賃上げを抑制し、正規雇用を賃金の安い派遣やパートなど非正規に置き換えてきましたが、安倍政権のもとでも株高や円安で増やした大もうけを内部留保にため込んで、賃上げもわずかにとどめています。国民の負担増と賃上げの抑制が消費低迷の最大の要因です。
例えば勤労者の実質賃金指数(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)でみると、安倍政権が年末に発足した2012年の指数は99・2(2000年平均=100)でした。それが13年以降、98・3、95・5、94・6と下がり続け、直近の16年も、消費者物価が上がっていないのに実質賃金の伸び悩みが続きました。労働者の平均賃金は最近のピークだった1997年に比べると年収で50万円以上減少し、なかでも中間所得層の生活悪化と貧困層の増大が深刻です。
日本経済の低迷が長期化しているのは、負担増と賃上げの抑制による消費の落ち込みが原因であることは今や明らかです。日本経済もかつての「高度経済成長」の時代には、「消費が投資を呼ぶ」という形が当たり前でした。ところが「アベノミクス」は、大企業がもうけを増やせば、回り回って賃金も増え、消費も拡大するという「トリクルダウン(滴り落ち)」のシナリオを描いても、もうけは大企業にため込まれるばかりで、賃上げにも、消費拡大にも回ってきません。賃金にも設備投資にも回されない大企業の内部留保は一貫して増え続けており、昨年ついに、銀行や保険業を含めて386兆円に上りました。内部留保を全部取り崩さなくても増え続けるのを少し抑えるだけでも、大幅賃上げが可能です。賃上げだけでなく最低賃金の引き上げや大企業が負担する社会保険料を見直すなど、抜本的な改革が必要です。
賃上げすれば経済も拡大
全労連(全国労働組合総連合)と共同する労働運動総合研究所は、2万円の賃上げを実現すれば、家計消費需要が8・3兆円拡大し、国内生産が15・0兆円、国内総生産(GDP)に匹敵する付加価値が7・1兆円増え、それに伴って新たな雇用が93・2万人必要になり、税収も1・4兆円増えるという試算をまとめています。
福祉の充実と負担減で国民の安心を実現し、賃上げで日本経済を景気回復の軌道に乗せていく、政治経済の転換が不可欠です。