2017年2月5日(日)
日米同盟強化が鮮明に
マティス国防長官 初来日
さらなる軍拡の危険も
大統領選挙前、「在日米軍撤退」にも言及していたトランプ政権の発足後、初めてとなるマティス米国防長官の来日(3、4日)。“同盟弱体化”どころか、「抑止力・対処力を一層強化する」(4日の日米防衛相会談)として、同盟強化の方向が鮮明になりました。今後も在日米軍基地の強化や、新ガイドライン(日米軍事協力の指針)と安保法制=戦争法に基づく日米の軍事一体化、自衛隊の海外派兵拡大の方向が狙われることになります。
辺野古推進を確認
その端緒となる動きが、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設の動きです。安倍晋三首相との会談(3日)では、新基地建設が普天間基地問題の「唯一の解決策」であり、防衛相会談では「1日も早い」完成が確認されました。
安倍政権は、辺野古での護岸工事に伴う汚濁防止膜を固定するコンクリートブロック228個を、早ければ6日から投下する構えを見せています。マティス氏の来日に加え、10日に予定されている日米首脳会談に向けてのアピールであることは明らかです。
米軍経費「手本」
トランプ氏が大統領就任前、「100%負担」に言及したことで、在日米軍駐留経費のあり方も注目されました。世論調査では圧倒的多数が負担増に反対し、開会中の国会でも野党側から懸念が相次ぎました。
こうした動きを反映して、今回の訪日では議題になりませんでした。しかし、マティス氏は世界でも突出した日本の米軍経費負担が「世界の手本になる」と絶賛し、今後も維持を求めました。さらに政府・与党内では、すでに次期中期防衛力整備計画(2019〜23年度)をめぐる議論が開始されており、トランプ政権の意向を反映して、さらなる軍拡の方向に傾く危険があります。
日本防衛と無縁
見過ごせないのは、マティス氏が「尖閣諸島が日本の施政下にあり、日米安保条約5条が適用される」と述べたことで、日本側が米国の“防衛義務”を確認したとして安堵(あんど)していることです。
しかし、これは単に「適用される」だけであり、実際に在日米軍が尖閣諸島をめぐる紛争に対処するかどうかは別問題です。在日米軍は大半が地球規模の遠征部隊であり、「日本防衛」の第一義的な義務を負っているわけではないことは、これまでと何ら変わりません。
「核の傘」に固執
「核の傘」を含む米国の「拡大抑止のゆるぎないコミットメント」が確認されたのも重大です。3月下旬から国連で核兵器禁止条約をめぐる会議が始まる中、日米両国が同条約締結の妨害勢力として否定的な役割を果たすことを示したものです。世界で唯一の被爆国でありながら、恥ずべき姿勢です。(竹下岳)
■日米防衛相会談のポイント
〇北朝鮮の核・ミサイル開発は「重大な脅威」
〇尖閣諸島は日本の施政下。安保条約5条の適用範囲
〇南シナ海への関与を強化
〇米国の拡大抑止(核の傘)のコミットメント
〇ガイドライン踏まえ同盟の抑止力・対処力を一層強化
〇辺野古新基地は「唯一の解決策」、「1日も早い」建設を
〇日本の在日米軍経費負担は「他国の手本」