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2017年4月28日(金)

対北朝鮮 被害想定が警告する軍事力行使の危険性

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 核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対して、トランプ米政権は「全ての選択肢がテーブルの上にある」として軍事力行使も排除していません。安倍晋三首相らは「評価」すると述べ、歓迎の姿勢すら表明。しかし多くの人々が、仮に朝鮮半島で戦争が起きれば、破滅的な結果をもたらすと警告しています。

全面戦争の選択肢も

 1994年、当時のクリントン米政権が、先制攻撃も含む軍事的選択肢を検討しました。

 元ワシントン・ポスト紙記者のオーバードーファー氏は、著書『二つのコリア』で、94年に当時のラック在韓米軍司令官が次のように予測したことを紹介しています。

 「朝鮮半島で全面戦争が再発した場合、死者は100万人にも上り、うち米国人も8万〜10万人が死亡する」「戦争当事国や近隣諸国での財産破壊や経済活動中断による損害は1兆ドルを上回るだろう」

 当時の金泳三(キム・ヨンサム)韓国大統領は、99年に韓国誌『月刊中央』のインタビューで、米国が北朝鮮への先制攻撃を選択肢としていることを知り、レイニー駐韓米大使に抗議したと語っています。

 金氏は「戦争の一歩手前までいった」と回想し、レイニー氏に「どうしてクリントン(米大統領)はこんなことをするんだ。直ちに中止せよ。中止しなければならない」と迫ったといいます。

韓国で死者125万人も

 2006年に北朝鮮は初の核実験を強行。朝鮮半島での核戦争という最悪の事態を懸念する声も出始めました。

 韓国国防省が管轄する放送局「国防TV」のウェブサイト上に公開されている映像資料「朝鮮半島核戦争シナリオ」は、ソウルに北朝鮮の核爆弾1発(広島型原爆1個分=15キロトン級=と想定)が投下された場合、爆発による死者が約40万人に達し、放射能被害による死者も含めると、計約125万人が2〜6週間以内に死亡すると推計しています。

 「国防TV」によると、この映像は米国防総省による「朝鮮半島核戦争シミュレーション資料」を基に作成されたもので、09年の「国軍放送第3回創作映像公募展の受賞作」だといいます。

 米国のランド研究所が10年に発表した報告書「北朝鮮核脅威の不確実性」は、ソウルに10キロトン級の核兵器1発が投下された場合、約12万5000〜20万人が死亡。負傷者を含めれば約29万〜40万人の死傷者が出ると推計しています。

 また、重傷約31万人、軽傷約20万人のほか、被爆した恐れのある約80万人の計約134万人が治療を必要とすると指摘。しかし、ソウル首都圏の病床数は約23万3000床しかないため、多くの負傷者や被爆者が死亡する恐れがあるとしています。

 経済的な損害も巨額です。国内総生産(GDP)は毎年、10%ずつ減少し、損失総額は約1兆5000億ドルに達するといいます。

軍事対応は短絡的

 今回の事態でも、米軍が先制攻撃を行った場合の北朝鮮側の反撃によって、おびただしい犠牲が発生することを警告する発言が相次いでいます。

 オバマ前政権で国防長官を務めたカーター現ハーバード大学教授は、先制攻撃すれば「高い確率で、北朝鮮は韓国への侵攻を試みるだろう」「その戦争は朝鮮戦争以来、見たこともないような激しさとなるだろうということだ。ソウルは非武装地帯の近くに位置し、だから戦争は極めて破壊的なものになるだろう」と述べています。(5日=米ABCテレビとのインタビュー)

 「見たこともない」激しさとは何か。1994年の危機の際にクリントン政権の国防長官だったペリー氏は、自暴自棄になった北朝鮮指導者が「権力から一掃される前に、最後のハルマゲドン(最後の決戦)の手段として核兵器を使用するかもしれない」と指摘。「通常戦力による軍事紛争、通常戦争がエスカレートして核戦争までわれわれが引きずり込まれる」と述べています。(17日=米PBSニュースのインタビュー)

 早稲田大学の李鍾元(リー・ジョンウォン)教授は、危機を回避して、「朝鮮半島の非核化、平和協定の締結を目標とした解決の枠組みをつくらなければならない」と述べ、「今は軍事的な対応だけが短絡的に議論されている印象です」と警告しています。(本紙21日付インタビュー)

 北朝鮮の核・ミサイル問題の解決には、軍事専門家らの被害想定やそれを基にした分析に照らしても、軍事的な選択肢はありえず、あくまで外交交渉に徹することが求められているのです。


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