2017年8月1日(火)
主張
温暖化と国際社会
パリ協定の取り組みの加速を
日本でも世界でも豪雨や熱波など異常気象が続き、温暖化に対して危ぐの声が上がっています。先日、国連本部で開かれた「持続可能な開発目標(SDGs)」達成めざす閣僚級会合は、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の完全履行を柱にした宣言を採択しました。トランプ米政権の「パリ協定」離脱表明から2カ月、米国が孤立を深める中、国際社会は「パリ協定」に基づく取り組みの加速を求めています。
「脱炭素社会」への転換
今年4月、ハワイ島で観測された大気中の二酸化炭素濃度が410ppmを記録しました。二酸化炭素は温室効果ガスの一つで、その濃度は産業革命前の280ppmから加速度的に増え、温暖化や海洋酸性化に直結しています。世界気象機関は2016年の平均気温が観測史上もっとも高温だったと発表しました。極域の海氷面積は過去最少となり、アフリカ大陸では干ばつが深刻化し、アジアでも台風の巨大化や降雨量の激増などが警告されています。
温暖化は途上国の貧しい人々の命や住まい、生計手段を奪い、難民の増加など世界の安全保障をも揺るがしています。世界から貧困や格差をなくすSDGs達成の会合が「パリ協定」の完全履行をうたったのは、貧困解決など世界の課題に温暖化対策が不可欠だからです。7月上旬にドイツで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議も米国以外の19カ国が結束して「パリ協定」の「完全実施に向けた強い決意を再確認する」と宣言、世界の流れに背を向けたトランプ政権の姿が鮮明になっています。
現在150以上の国・地域が締結・批准している「パリ協定」は、温室効果ガスを排出する化石燃料から脱却し、「脱炭素社会」への転換を打ち出した画期的なものです。気温上昇を産業革命前から2度より十分低くする(1・5度もめざす)を長期目標にして、今世紀後半に温室効果ガスの排出の「実質ゼロ」を掲げています。
すべての国が削減目標を自ら設定し、国内対策を国連に提出し、5年ごとの見直しを義務付けました。しかし、現状では各国の目標を足し合わせても、気温上昇を2度に抑える削減量に達しません。日本をはじめ「先進国」は過去に大量排出した責任を自覚して行動することが重要です。
一方、「パリ協定」は風力や太陽光など再生可能エネルギーや省エネ技術の普及を後押ししています。15年、再生エネの世界の導入量は過去最高になり、既存の発電設備容量で石炭火力発電を超えました。再生エネ100%を目指す国や地域、自治体、企業が世界各地で生まれています。
日本は後ろ向きの脱却を
こうした中、日本は大きな後れを取っています。「2050年に80%削減」との閣議決定にもかかわらず長期ビジョンが依然、策定されていません。30年までの削減目標を抜本的に引き上げ、石炭や原発を「重要なベースロード電源」とするエネルギー基本計画を見直して石炭火発建設や海外での石炭投資をやめ、原発にも依存せず再生エネの大量普及と省エネで「脱炭素社会」にかじを切ることが急がれます。日本の排出量は世界第5位であり、大幅な削減が当然です。歴史的責任も踏まえ、積極的な役割を果たすべきです。