2017年9月23日(土)
電通社長 違法残業を謝罪
初公判 検察「社会的責任大きい」
過労自殺社員の母「電通は改革実行を」
新入社員の過労自殺を引き起こした大手広告代理店・電通(東京)の違法残業事件で22日、法人としての電通の労働基準法違反を問う初公判が、東京簡裁(菊地努裁判官)で開かれました。略式起訴で済まされることが多い労基法違反事件で、大企業に対して公判が開かれるのは異例です。出廷した山本敏博社長は「間違いありません」と起訴事実を認めて謝罪。検察側は罰金50万円を求刑し、即日結審しました。判決は来月6日です。
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同事件は、2015年12月に新入社員の高橋まつりさん=当時(24)=が過労自殺したことで発覚。検察は、部長3人が高橋さんを含む4人の労働者に対して、労使で取り決めた残業の上限(三六協定)の月70時間から最長19時間以上超えて働かせていたとして起訴しました。
検察側は冒頭陳述で、電通が14年6月と15年8月に労基署から是正勧告を受けたものの、増員や業務量削減など抜本策を講じず、「実際には、サービス残業を余儀なくされる労働者が相当数」いたと指摘しました。
論告求刑では、会社の対応が、労働者のための長時間労働改善ではなく、三六協定特別条項の上限を2倍に引き上げるなど、違反業者としての処分を避けるため、形式的に三六協定違反の解消をはかった「小手先だけの対応」だったと批判。電通は、「我が国の広告業界では随一の規模および業績を誇る大企業」であり、「社会的責任は大きい」と強調しました。
傍聴席では、高橋まつりさんの母、幸美さんが見守りました。初公判後に記者会見した幸美さんは、「電通は労働環境の改革計画を検討・実施していると表明されていましたが、本当に実行しなければ意味がありません。電通の取り組みを今後とも監視していきたい」と訴えました。