「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2017年9月24日(日)

主張

電通過労自殺裁判

悲劇繰り返さぬ法規制が急務

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 大手広告代理店・電通の新入社員が過労自殺に追い込まれた労働基準法違反事件の初公判が東京簡裁で開かれ、出廷した被告・電通の社長が違法残業を謝罪しました。公判で改めて浮き彫りになったのは、労働者の健康よりも、会社の利益を優先させ、違法な長時間残業を常態化させていた電通の異常な働かせ方の実態です。電通の責任を厳しくただすと同時に、国の責任で、長時間労働をなくし、過労死を根絶するための法規制を実現することが急がれます。

心身の健康顧みない姿勢

 新入社員の高橋まつりさん=当時(24)=の過労自殺が労災認定されてから1年になります。略式起訴になることが多い違法残業事件が公の法廷で審理されるのは異例です。事件の衝撃の大きさと社会的影響力の強さを示すものです。

 公判では、検察の冒頭陳述や論告求刑で、「クライアントファースト(顧客最優先)」として困難な業務も引き受け「深夜残業や休日出勤もいとわない考えが浸透し、全社的に長時間労働が行われていた」状態が明らかにされました。

 労働基準監督署から度重なる「是正勧告」を受けるようになっても、労働者の増員や業務量の削減などの抜本的な対策を講じませんでした。2014年度の違法残業を強いられた労働者は毎月1400人前後に上っていたといいます。労働時間を減らすのでなく、残業時間の上限について労使間で決める三六協定特別条項の上限を2倍に引き上げるなど驚くべきことも行っていました。「形式的に三六協定違反の解消を図ったにすぎず、労働環境の改善とはむしろ逆行するいわば小手先だけの対応に終始」「労働者の心身の健康を顧みない労務管理」(論告求刑)と批判されたのは当然です。

 電通の山本敏博社長は法廷で起訴事実を認め、謝罪しました。しかし、まつりさんの母、幸美さんは「にわかに今日の社長の言葉を信じることはできない」と今後も監視していくと語ります。この言葉を重く受け止めるべきです。

 過労死・過労自殺という悲劇が繰り返され、そのたびに長時間労働の是正が叫ばれながら、深刻化しているのは、日本の労働法制に決定的弱点があるためです。

 日本には、残業時間の上限規制も、勤務と勤務の間に最低とるべき休息時間―インターバル規制もありません。労使で三六協定を結べば、長時間の残業が事実上野放しになっていることは、電通の事件からも明らかです。例外となる残業時間を「週15時間、月45時間、年360時間以内」と定めている厚生労働大臣告示を上限とする法定化が必要です。残業代の割増率を増やすことで長時間労働を抑えることも不可欠です。

「働き方改悪」を許さず

 安倍晋三政権がすすめる「働き方改革推進」法案は、長時間労働をいっそうひどくし、過労死を促進する大改悪です。「残業時間の上限規制」といいながら、「2〜6カ月の平均で月80時間」、繁忙期で「月100時間未満」と定めるなど、過労死ラインの残業時間を公的に容認するものです。「高度プロフェッショナル制度」は、労働時間規制をなくすものです。「働き方大改悪」を絶対に許さず、「8時間働けばふつうに暮らせる社会」を実現するために、国民的な運動を広げることが求められます。


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって