2017年10月31日(火)
主張
国連総会の議論
示された核兵器禁止条約の力
7月に採択された核兵器禁止条約が、国際政治にも重要な変化をもたらしています。
9月から始まった国連総会では、多数の非核保有国が禁止条約を支持し、「核兵器のない世界」へ、さらなる行動を求めました。
追い詰められる核保有国
中満泉・国連軍縮担当上級代表は国連総会・第1委員会(軍縮・国際安全保障)の演説の中で、禁止条約を「歴史的な成果」として高く評価しました。各国からも「世界的な核軍備撤廃にむけた決定的な措置」(東南アジア諸国連合を代表したタイ)など、禁止条約の意義を強調する演説が相次ぎました。「多国間主義の価値を示す例だ」(メキシコ)と、多数の国々が知恵と力を結集した成果だとする発言もありました。
こうした議論をへて27日には、一連の核軍縮関連の決議が採択され、禁止条約への歓迎も盛り込まれました。なかでも加盟国の3分の2近くの賛成で採択された決議「多国間核軍縮交渉の前進」は、すべての国が核兵器禁止条約に署名し、批准することを国連決議として初めて加盟国に呼びかけました。核兵器廃絶の実現にむけては、さらに行動が必要だと訴えています。
総会では2020年核不拡散条約(NPT)再検討会議や18年の核軍縮についての国連総会ハイレベル会合などにむけて、さまざまな提案がおこなわれました。
禁止条約によって、核兵器を違法化・禁止する国際的な規範がうちたてられたことで、核軍縮の議論に新たな勢いを与えています。
核保有国などは「核兵器を必要とする今日の情勢を無視することはできない」(アメリカ)などと、禁止条約に敵対しました。北朝鮮の核開発は、断じて許されるものではありません。しかし、核をめぐる緊張が高まっている今だからこそ、核兵器の全世界的な禁止と廃絶が求められているのです。核保有国の道理のない主張は、道義的政治的に追い詰められた姿を示しています。従来の立場を見直し、核兵器廃絶へ決断をすべきです。
こうした中で、禁止条約に背をむけた安倍晋三政権の態度に、少なくない国から公然と批判が表明されました。日本提案の決議案に、核兵器禁止条約への言及がなく、核不使用の表現を後退させたことなどが理由でした。アメリカの圧力を指摘する報道もありました。
日本政府は「対立する非核保有国と核保有国の橋渡しをする」などと主張しますが、それは核保有国に「追従」することへの言い訳です。アメリカの「核の傘」に依存し、核兵器の使用とその威嚇は欠かせないとする日本の姿勢にはまったく大義がありません。
核兵器禁止条約が成立したもとで、被爆国としての立場が厳しく問われています。「核の傘」から脱却して、核兵器の禁止と廃絶を求める世界的な流れに合流することを強く求めます。
被爆国の運動の責務
日本で核兵器禁止条約に署名し、批准する政府をつくることは、被爆国の運動の国際的な責務となっていると言えます。政治的立場をこえて広がる「ヒバクシャ国際署名」を国内外でいっそう発展させるとともに、「禁止条約に署名せよ。批准せよ」と自公政権に迫る、国民的運動の新たな構築と発展が期待されています。