2017年11月22日(水)
内政・外交の根本問題を問う
首相“逃げ”と“居直り”に終始
衆院本会議 志位委員長の代表質問
日本共産党の志位和夫委員長は21日の衆院本会議の代表質問で、「森友・加計」疑惑や圧力一辺倒の北朝鮮対応、国民に痛みをもたらす全世代型の「社会保障改革」など、安倍暴走政治の問題を一つひとつ厳しくただしました。安倍晋三首相は、どの問題でもまともに反論できず、「ご指摘は全く当たらない」と6回も繰り返し、“逃げ”と“居直り”の姿勢に終始しました。
「森友・加計疑惑」
昭恵氏と加計氏の国会招致は不可欠
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志位氏は、安倍首相の関与が問われている国政の私物化疑惑=「森友・加計」問題の核心を正面からただし、真相究明のため関係者の国会招致を求めました。
「森友学園」の疑惑について志位氏は「国民の財産である国有地が、なぜ8億円も値引きされ、ただ同然に売却されたのか」と強調。財務省が、国有地の地下深くまでごみが埋まっていたとの値引きのシナリオを描き、学園側に提案していたことを示す音源(左別項)が明らかになったことを示し、「籠池氏が国会で『神風が吹いた』と証言した時期と、安倍昭恵夫人が名誉校長に就任した時期が重なっているのは、到底偶然とは考えられない」と迫りました。
安倍首相は「国民から疑念の目を向けられたとしても、もっともだ」としながら、国会や総選挙で「私自身丁寧に説明してきた」と言い張りました。
「加計学園」の疑惑について志位氏は、加計孝太郎理事長の親友である安倍首相の関与によって「獣医学部新設に特別の便宜が図られたのではないか」と指摘。安倍首相が「私が関与したと言った方は1人もいない」と言い逃れしていることについても、「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」などと記された文書が文科省内で交わされていたことを示し、「圧力として働いたことは紛れもない」と批判しました。
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志位氏は、首相の名をかたった人物がいるというなら断固とした処置をとるべきだと強調。国家戦略特区諮問会議で獣医学部新設が認可される時期に、加計氏が農水、文科、地方創生の3大臣に相次いで面会(上表)していたことを「極めて異例だ」とただしました。
安倍首相は、プロセスには「一点の曇りもない」と自身の関与を否定しながら、首相の名をかたった人物を処分する考えはないと述べました。
志位氏は、国有地売却に直接かかわった財務省職員と昭恵氏、加計氏の国会招致が不可欠だと主張。安倍首相は「国会が決めること」との答弁を繰り返しました。
北朝鮮
軍事力行使やめよ「対話で平和的解決」こそ
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北朝鮮問題への対応はどうあるべきか。志位氏は、安倍首相の姿勢の問題点を二つあげて追及しました。
第一は、「対話のための対話では意味がない」と「対話否定論」を繰り返す姿勢です。志位氏は、現在の最大の危機は「米朝の軍事的緊張の高まりの下、偶発的な事態や誤算から軍事衝突が起き、戦争に発展することだ」と指摘し、「危機打開のため、米朝が直接対話に踏み切ることが必要ではないか」と認識をただしました。
志位氏は、経済制裁の強化だけでは事態の打開はできないと述べ、「制裁強化と一体に対話による平和的解決をはかることこそ唯一の解決策だ」として日本政府が率先して働きかけるよう求めました。
第二は、軍事的対応を含む米国政府の立場を支持する姿勢です。
志位氏は、「すべての選択肢はテーブルの上にある」とする米国政府の姿勢は軍事力行使の選択肢を含んでいると指摘。米国が先制攻撃に踏み切れば多数の命が失われる強い懸念(左別項)があるとして、「こうした危険な道にあらかじめ支持を与えるなど言語道断だ」と強調し、「米政府に対し、先制的な軍事力行使を絶対にやるべきでないと提起すべきだ」と迫りました。
安倍首相は「非核化に向けた対話を拒否しているのは北朝鮮だ」として、引き続き圧力一辺倒で対応することを表明。軍事的対応を選択肢に含む米国の姿勢については「米国の今後の対応を予断することは差し控える」と述べました。
くらし経済
「痛み伴う改革」やめ社会保障拡充へ転換を
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暮らしと経済について志位氏は、安倍政権の基本姿勢が財界の求める「国民の痛みを伴う改革」となっていることを告発しました。
経団連の榊原定征会長は総選挙の翌日、安倍政権に「計画通りの消費増税の実行」と「社会保障制度の改革」に取り組むよう提言。これに呼応するように財務省の財政制度等審議会や内閣府の経済財政諮問会議の社会保障改革案は、医療、介護、生活保護など社会保障のあらゆる分野で給付削減の大ナタをふるう内容となっています。
介護では「要介護1、2」の240万人の在宅サービスを保険給付から外す計画です。すでに「要支援1、2」の176万人の在宅サービスが保険給付から外されているため、「要支援・要介護と認定されている人の実に65%が保険給付の枠外に置かれてしまう」(志位氏)のです。(図)
志位氏は、介護離職が10年間で105万人に上るとして、「6割以上の人から保険給付を取り上げて、どうして『介護離職ゼロ』になるのか」とただしました。安倍首相は、要支援外しを「地域支援事業の対象とした」と無責任に答え、市町村任せにしたためサービスが削減されている実態を無視しました。
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生活保護では、母子加算をはじめ子育て世帯の各種加算の切り下げが検討されています。志位氏は、子どもの多い世帯ほど厳しく削減されるとして、「子だくさんの貧困家庭に事実上のペナルティーを科すことになる」と批判しました。首相は「低所得世帯と均衡がとれる水準となるよう検証している」と“下”に合わせた改悪であることを認めました。
志位氏は、首相の言う「全世代型」の社会保障は「全世代に対する社会保障切り捨てにほかならない」とし、社会保障拡充への政策転換を要求しました。
消費税増税を求める経団連は、法人実効税率の25%への引き下げを要望しています。志位氏は、すでに4兆円の法人税減税、大企業減税が行われた上に2兆円以上の減税となると指摘し、「増税するなら『アベノミクス』で空前のもうけを手にしている富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革こそ実行すべきだ」と求めました。
安倍首相は、消費税について「引き上げを中止することはない」と言明。法人税減税については「情勢の変化も踏まえつつ検討」と否定しませんでした。
国家的詐欺でしかない
中央社会保障推進協議会の山口一秀事務局長の話 志位委員長の指摘はすべてもっともです。安倍政権の介護保険改革は、利用者、家族、事業者とそこで働く労働者など、介護にかかわる人全般に非常な重荷がのしかかるものです。サービス削減だけでなく介護報酬の引き下げで、事業者が事業所を開きたくても開けない、働く人も集まらないということも起こっています。 安倍首相は「国家的詐欺にあたらない」と強弁しましたが、実際に介護保険料を払っていながら制度を利用できない実態は多くある。これはもう詐欺と言うしかありません。首相が詐欺でないと言いつくろっても、保険料を払った分に見合うだけの介護は保障されていません。 介護離職ゼロについても、実際に介護で働く職場の労働者の給料などの処遇は最悪のままです。介護家族への負担をいっそう重くする改革を強行しておいて、介護離職ゼロと言っても現実的ではありません。
沖縄米軍基地
反対の民意認めよ地位協定の抜本見直しを
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志位氏は、沖縄県名護市辺野古への新基地建設に反対する「オール沖縄」が、10月の総選挙で四つの小選挙区のうち三つで勝利したことに言及。わずか2週間後に政府が新たな護岸工事に着手したことにふれ、「県民が新基地建設に反対の審判を下した事実を認めないのか」とただしました。
「政府の暴挙は、沖縄には民主主義は適用しないという宣言に等しい」と批判した志位氏に対し、安倍首相は「先の選挙の結果については真摯(しんし)に受け止める」と言いながら、引き続き工事を進めていく考えを示しました。
志位氏は、米軍ヘリが民有地で炎上・大破した事故で、日本の警察が立ち入り調査すらできなかった実態を告発。昨年のオスプレイ墜落事故の際にも同様の事例があったとして、「独立した主権国家といえるのか」と迫り、「この屈辱的な現状をただすために、日米地位協定の抜本見直しが必要だ」と求めました。
安倍首相は、事故の調査は行ったと強弁し、「いずれにしてもご指摘は当たらない」などと繰り返しました。
9条改憲
求められるのは憲法を守る政治
志位氏は、安倍首相が狙う憲法9条への自衛隊明記について、「後から作った法律は、前の法律に優先する」との法律の一般原則にふれ、「後から作った条項で自衛隊が明記されれば、9条2項の空文化・死文化に道を開く」と指摘。9条2項によって「できない」とされてきた武力行使のための海外派兵や集団的自衛権の全面的発動が可能となり、「海外での武力行使が無制限になる」と警告しました。
首相は何の根拠も示さず、「ご指摘は全く当たらない」などと述べました。
志位氏は、安倍首相が安保法制=戦争法や秘密保護法など憲法違反の法律を数の暴力で押し通してきたと指摘。憲法53条に基づく野党の臨時国会開会要求を3カ月も放置し冒頭解散を強行したことにもふれ、「憲法を守らない総理に憲法を変える資格などない」と強調。「いま、日本に求められているのは憲法をきちんと守る政治を取り戻すことだ」と主張しました。