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2017年12月23日(土)

軍事栄え生活しぼむ

大企業に忖度 庶民には格差

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来年度政府予算案

 憲法9条改悪、「戦争する国づくり」を突き進む安倍政権。同政権が22日に閣議決定した2018年度政府予算案は、歯止めのない大軍拡への危険な一歩を踏み出す一方で、生活保護や医療・介護など社会保障ではサービスの削減と国民にいっそうの負担増を押し付けています。安倍首相が総選挙で公約した「幼児教育・保育無償化」も先送りにするなど国民の願いに冷たく背を向けた予算案です。

米国製武器を大量購入

軍事費 米の要求うのみ 

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 北朝鮮の核・ミサイル開発問題で対話を否定し、日米同盟を絶対視してトランプ大統領による米国製武器の大量購入要求にそのまま応じる安倍政権のもと、大軍拡が加速し、軍事費は過去最大を更新しました。

 北朝鮮情勢に対応するためとして、弾道ミサイル防衛関連経費は1365億円にのぼりました。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」導入のため地質測量調査費や基本設計費など7億3000万円を新たに盛り込みました。

 「島しょ防衛」を理由に、将来の敵基地攻撃能力保有の布石となる、長距離巡航ミサイル「JSM」の取得経費21億6000万円を計上しました。「高速滑空弾」や「対艦誘導弾」の技術研究費も計上し、攻撃能力の向上を狙います。

 米国製の高額兵器の購入もさらに膨張しています。米国からの有償軍事援助(FMS)に基づく購入額は4102億円と、17年度から506億円も増えました。

 昨年、今年と墜落事故が連続した垂直離着陸機オスプレイ(4機393億円)、F35Aステルス戦闘機(6機785億円)、無人偵察機グローバルホーク(147億円)などを購入。イージス艦に搭載する能力向上型の迎撃ミサイル「SM3ブロックIIA」の取得に440億円をつけています。

 「イージス・アショア」は米ロッキード・マーチン社製で、日本の戦闘機に搭載するため3000万円の調査費が盛り込まれた射程900キロのミサイル「JASSM」「LRASM」も米国製。導入が進めば、米国製兵器購入額がさらに増大します。

 「米軍再編関係経費」(「地元負担軽減」を口実に基地強化などを図る分)は、17年度比150億円増の2161億円で過去最高。沖縄に関する特別行動委員会(SACO)関係経費が51億円、米軍「思いやり予算」が1968億円と、米軍関係の三つの経費を合わせた額は4180億円に達しました。

 住民の反対の声が上がっているにもかかわらず、南西諸島への自衛隊の増強を進め、警備部隊配置のため鹿児島県の奄美大島の施設整備に156億円、沖縄県の宮古島の施設整備に261億円を盛り込んだほか、同県の石垣島の用地取得経費などに136億円をつけました。

 19年度以降に支払いが生じる新たなツケ払い(新規後年度負担)額は、2兆1164億円となりました。

医療・介護・生活保護…

社会保障 抑制一辺倒に

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 2018年度政府予算案で、安倍政権は、社会保障予算では、「自然増」分を1300億円削減しようとしており、同政権の6年間の削減額は1・6兆円に達することになります。(左表)

 安倍政権は、「骨太方針2015」の中で、16〜18年の3年間で社会保障費の自然増を計1・5兆円程度に抑える「目安」を設定。5000億円を超えた分を予算案の段階で圧縮・削減し、18年度予算案も、概算要求段階の6300億円から1300億円削減しました。

 削減のターゲットとされているのが、病気や障害、生活苦をかかえる高齢者や障害者、生活保護受給者ら本来、国が憲法25条にもとづいて積極的に支援すべき人たちです。

 安倍政権は、社会保障の給付削減と自己負担増を連続して進めてきました。

 18年度も、70歳以上の患者負担限度額の引き上げ、75歳以上の後期高齢者医療保険料の低所得者への特例軽減の縮小、介護保険の利用者負担の2割から3割への負担増を計画。

 生活保護では、来年10月から、食費や光熱費など日常の生活費にあてる「生活扶助」を現行から最大5%引き下げ、後発医薬品の使用を原則とするなど医療扶助も抑制を図り、生活保護費負担金を166億円削減します。

 生活保護世帯は9月時点で過去最多を更新。保護費の引き下げは「貧困と格差」の拡大につながります。

 安倍政権の社会保障連続改悪のもとで、医療・介護、障害者福祉を支える事業者の経営や従事者の待遇は悪化の一途で、改善は急務です。

 18年度予算案では、改善を求める現場の声と運動を反映して、診療報酬で人件費などにあてる「本体部分」は0・55%、介護報酬は0・54%、障害者福祉サービス等の事業者報酬は0・47%と、いずれも若干の増額改定が行われました。

 しかし、その引き上げ幅には「0・55%の引き上げでは医療従事者の雇用・労働環境の抜本的改善には程遠い」(全国保険医団体連合会)、「プラス改定といっても、(介護報酬は)前回2015年改定で過去最大級となる2・27%もの引き下げが実施されており、わずか0・54%の引き上げでは、事業所が現状で抱えている困難を解決するには程遠い水準」(全日本民医連)など厳しい声が出ています。

 政府予算案の抜本的な組み替えが求められます。

低すぎる保育所の整備

少子化対策 伸びわずか

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 少子高齢化を「最大の課題」「国難」といって衆院解散の口実にした安倍首相。ところが少子化対策費の伸びはわずか1・4%にすぎません。19年10月の消費税率10%への引き上げを前提にしているため、総選挙で訴えた幼児教育無償化も先送りしています。

 保育所に入れない待機児童が大きな社会問題になるなか、安倍政権は20年度までに32万人分の保育の受け皿を整備するとし、18年度予算案では8・5万人分の整備費として1231億円を計上しました。しかし、32万人分は非現実的な保育の利用申込率を前提とした過少な見積もりにすぎず、民間調査機関からはいまの整備目標のままなら約60万人分不足するとの試算もでています。

 18年度の8・5万人分のうち2万人分は子どもの年齢制限や人数制限がなく、保育士の配置基準なども緩い企業主導型保育です。安心して通うことができる認可保育所の増設という、圧倒的多数の保護者の願いに背を向けています。

 安倍政権は子育て世帯に重くのしかかる消費税増税を前提に、「人づくり革命」「生産性革命」といって19年度から3〜5歳の認可保育所や幼稚園を無償化するとしています。住民税非課税世帯の子どもを対象に大学や専門学校の授業料も免除するとしています。

 しかし、そこでうたわれているのは「世界で一番企業が活躍しやすい国」をつくるための教育です。人工知能などの技術革新に対応した能力を身に付けるための幼児教育の重要さが語られ、学費免除の対象となる大学には「産業界のニーズ」を踏まえるよう要求。「人づくり革命」の本質は財界奉仕の人材育成にほかならず、憲法が定める教育の機会均等の保障とは真逆の思想です。

法人税を大幅引き下げ

生産性革命 大企業優遇

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 18年度予算案と「税制改正」大綱は「生産性革命」を看板にしています。その実態は大企業への優遇策です。

 予算案では人工知能(AI)技術とロボットを融合させた次世代技術の研究開発や、トラックの自動走行システムの実証実験などが盛り込まれました。

 公共事業では生産性革命として、物流ネットワークを強化するといいます。その中身は「迅速かつ円滑な物流の実現のため、三大都市圏環状道路や空港・港湾などへのアクセス道路の整備を推進する」というもの。「低金利」を活用して、高速道路への財政投融資も行うことも盛り込みました。結局、看板を変えて不要不急の大型プロジェクトを推進するのです。

 「税制改正」では生産性革命の目玉として「賃上げ減税」が盛り込まれました。これは一定の賃上げや投資を行った企業に対し、法人税額の20%まで税額控除ができるという制度です。

 賃上げした企業がさらに、IoT(モノのインターネット)など情報連携利活用設備などに投資した場合にも投資額に応じて、法人税額の20%まで税額控除ができます。

 賃上げ減税の恩恵を受けられるのは法人税を納めている企業だけです。加えてIoT投資ができるのは大企業に限られます。経営の苦しい中小企業が工夫して賃上げをしても1円も減税されません。

 大企業優遇税制の代表格である研究開発減税は法人税額の40%まで控除が可能です。大企業が研究開発減税と賃上げ減税を最大限活用すれば、法人税は8割引きとなり、地方税と合わせても企業の税負担は12%程度まで下がります。

 生産性革命は税制の面からも予算の面からも大企業優遇の新しい看板にすぎません。

貧困層に負担いっそう

アベノミクス 経済壊す

 18年度政府予算案と「税制改正」大綱は国民が求めている「格差と貧困」の是正に背を向け、いっそうの格差拡大をすすめるものとなっています。5年間続いたアベノミクスのもと、日本社会の格差と貧困は深刻化しました。「異次元の金融緩和」による円安加速と株高は富裕層の資産を膨らませました。一方で中間層は疲弊し、貧困も深刻です。

 貧困層の生活苦に拍車をかけたのが安倍政権が14年4月に強行した消費税増税です。消費不況で日本経済の低迷が続いています。にもかかわらず、今回、生活保護費のさらなる削減を打ち出し、貧困層に一層の負担を強いようとしています。

 「税制改正」では多様な働き方を応援するとして、給与所得控除の縮小と基礎控除の拡大を盛り込みました。たしかに850万円超の給与収入を得ている人が増税となり、多くのフリーランスや個人事業主は減税となります。しかし、富裕層の金融所得への優遇税制を聖域としているため、所得格差の是正には程遠い状況です。さらに19年10月に10%への消費税増税を強行すれば、格差はますますひどくなり、国民生活も日本経済もどん底に突き落とされます。

 いま必要なのは、税制では能力に応じた税負担です。歳出では低所得者に手厚い社会保障です。この方向こそ、国民生活を豊かにし、日本経済の低迷を打破する道です。

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