2017年12月30日(土)
無期転換めざし「市民講座」
道労連が各地で開催 切実な相談次々
参加者が雇用継続に
来年4月から、継続して5年働いた非正規雇用労働者に無期雇用に転換できる権利が発生します。これを回避するために企業などが雇い止めしようとする動きが広がるなかで、北海道労働組合総連合(道労連)は「市民講座」を開催するなど、雇い止めを許さない取り組みを広げています。(行沢寛史)
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13日、寒風が吹く中、札幌市内で開かれた「パート・臨時・契約などで働く人のための無期転換さっぽろ市民講座」。道労連組合員だけでなく多くの市民が来場しました。
「これだ」と思い
市民講座では、道労連の黒澤幸一議長がパワーポイントを使って無期転換ルールの仕組みと問題点、労働組合に加入して雇い止めを阻止した経験を紹介。組合に加入してこそ解決に力を発揮できることを知らせるとともに、終了後に個別相談に応じました。この日参加した女性も、大切に折りたたんだ新聞の告知記事を見せながら、「『これだ!』と思って参加しました。無期転換ルールについて知りたいけれど、知る機会がなかった」と語り、相談していきました。
2016年から各地で開催した市民講座は16回を数え、各地で多くの市民が参加。マスコミでも紹介されて話題になっています。
黒澤議長は「各地で、市民が講座を知らせる地元紙の記事を大切に持って参加してきます。それだけ切実になっているのだと思います」と語ります。
講座を通じて雇い止めを撤回させる成果が生まれています。
旭川市で医療機関に勤める女性は、1年更新で8年間勤めてきましたが、昨春、「契約の更新は行わない」とする労働契約を結ばされました。講座に参加した女性は、「契約打ち切りを恐れてサインしたけど、納得できません」と相談しました。
相談員から「合意した契約を撤回させるには、労働組合の交渉しかない」とすすめられ、道医労連に加入しました。
労組の力を発揮
組合として団体交渉を申し入れるとともに、契約終了後の契約更新を行うよう求める要求書を提出。1カ月後、医療機関は女性に対して「雇い止めはしない」と、雇用継続を約束しました。
黒澤議長は、「不更新条項のある契約を結んでも、団交するまでもなく撤回できる。労組の力を発揮した重要な経験です」と指摘します。
また、自動車大手の子会社で働く契約社員からは、契約書に期間は「最大2年11カ月」と明記され、その後6カ月のクーリング(空白)期間をおいて再雇用させるとの相談が寄せられています。クーリングを利用した無期転換逃れであり、安定雇用という法改正の目的に反するものです。国会でも日本共産党の小池晃書記局長が取り上げ、政府も無期転換逃れのためであれば許されないと認めています。道労連では、大企業に社会的責任を果たさせるたたかいを広げていく考えです。
組合加入、団交で解決できる
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北海道労働組合総連合(道労連)の黒澤幸一議長は「無期転換の市民講座で一番力をいれて訴えていることは、組合に加入し、交渉すれば解決できるということです。法律では十分規制されないところを、法律と労組がセットになってこそ解決できる」と話します。
この取り組みを通じて昨年、67人が新規に組合に加入しています。札幌地区労連の木村俊二事務局長は、「非正規雇用の多くが組合に加入していないもとで、労組のあり方も問われている。積極的な無期転換のたたかいが求められています」と語ります。
道労連は今後も、各地で講座を開催するとともに、来年4月に集団で無期転換を申し込む運動を計画しています。
黒澤議長はいいます。「何より非正規雇用労働者が当事者として声を上げないと解決できません。非正規雇用の組合員を増やして、雇用不安をなくし、労働条件の改善につなげていく一歩にしていきたい」