2017年12月30日(土)
主張
核兵器なき世界へ
歴史的成果を力に前進さらに
2017年は、「核兵器のない世界」をめざす市民社会と運動にとって歴史に刻まれる1年となりました。7月には人類史上初めて核兵器を違法とする核兵器禁止条約が採択され、12月には条約採択に貢献した国際NGO・核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)がノーベル平和賞を受賞しました。この画期的成果をさらにすすめることが重要になっています。
核保有国への批判相次ぎ
核保有国が、いっそう厳しい立場に追い詰められた1年でもあります。核保有国は核兵器禁止条約を交渉した国連会議をボイコットしましたが、国連総会では批判の矢面にたたされました。安全保障にとって「核抑止力」が必要だと強調して禁止条約を非難したアメリカなどに対し、非核保有国からは「核抑止のいかなる失敗も、必ず壊滅的な結果になる」「情勢が厳しいからこそ、核軍縮が必要だ」と批判と反論の声が上がりました。
北朝鮮の核・ミサイル開発も深刻化するもとで、核兵器の危険をリアルにとらえ、根絶する真剣な姿勢が問われています。核保有国には、全ての国に安全を保障する「核兵器のない世界」に向けた決断が迫られています。核保有国がかたくなに禁止条約を拒否している状況を打破しなければ、さらなる前進はありません。
核兵器禁止条約にはこれまでに56カ国が署名し、4カ国が批准しています。条約発効の基準となる50カ国の批准を早期に達成することが、今後の大きな焦点です。核保有国や同盟国での運動と世論の発展が強く求められます。
18年には、首脳や閣僚級の政府代表が参加する核軍縮についての国連総会ハイレベル会合が開かれ、20年の核不拡散条約(NPT)再検討会議の準備も行われます。非同盟諸国は、核兵器廃絶への手順も含めた包括的な条約も求めています。18年は、今年の歴史的成果を力に、核兵器廃絶をめざすあらゆる流れを大きく進展させ、合流させていくことが不可欠です。
なかでもカギをにぎるのが被爆国・日本の政府です。日本政府が禁止条約の署名・批准へとすすむならば、国際的に大きな影響を与えることは明らかです。それは核保有国やその同盟国が、禁止条約を真剣に検討する重要な契機にもなるでしょう。
ところが安倍晋三政権は先の国連総会で核兵器禁止条約に一切触れず、核兵器廃絶を未来永劫(えいごう)に先送りする、これまで以上に核保有国にすりよった決議案を提出しました。これは少なくない非核保有国から批判を浴びる異例の事態となりました。世界の流れに逆行する恥ずべき姿勢を変え、禁止条約に署名・批准する政府を実現することは、世界的な意義があります。
世界的な運動に力尽くし
禁止条約は、世界の構造変化の力を示しました。いまや大国だけでなく、多数の諸国と市民社会の声によって、世界が動く時代に入りつつあります。
ノーベル平和賞授賞式やローマ法王と被爆者との謁見(えっけん)など、世界の人々が被爆者に注目し、その訴えに耳を傾けようとしています。
「ヒバクシャ国際署名」は20年までに世界で数億人を目標にしています。2018年を、この目標達成に向けた世界的な運動が、さらに大きく発展した年とするために、力を尽くしましょう。