2018年1月4日(木)
ソニー 再雇用社員の時給アップ
1000円→1300円 最低賃金運動が力に
ソニーで60歳の定年後に1年ごとの契約で再雇用されている労働者の基本賃金が、時給1000円から1300円へと一気に30%増額され、話題になっています。ソニー労働組合仙台支部(電機連合加盟)の取り組みが、全社に波及したものです。(田代正則)
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ソニーで再雇用制度が導入されたのは2001年。それ以来、基本賃金は時給1000円のままでした。
ソニー仙台テクノロジーセンター(仙台TEC、宮城県多賀城市)で16年、仙台支部組合員の佐藤美和子さん(61)が定年後再雇用となりました。
正社員のときとまったく同じ、高性能な磁気テープに使う磁気塗料の検査を続けています。コンパクトカセット時代から研究開発に携わり、高い技術力を持っているからです。「再雇用になる前と同じ仕事なのに、賃金だけ大幅に下げられることに、納得いきませんでした」
ソニー労組仙台支部は大幅賃上げを会社に要求。全労連などによる最低生計費調査で、全国どこで生活するにも時給1500円程度が必要になるとした調査結果なども活用し、品川(東京都)、厚木(神奈川県)などソニー各拠点の労組支部が共同して運動をすすめました。
こうしたなか会社は組合に対して、17年10月から基本賃金を時給1300円に改めると通知しました。一時金については、半減させられましたが、年収で240万円から270万円に30万円増額となりました。
会社は団体交渉のなかで、賃上げに応じた理由の一つについて、最低賃金が毎年上昇し、東京都では958円と、1000円に迫っていることをあげました。
ソニー労組仙台支部の松田隆明委員長は、「全国の労働組合、労働者が最賃1500円を求める運動に取り組んできたことが、ソニーにも反映したと思います。また、雇用形態にかかわらず、同じ仕事をしていれば同じ賃金を支払わせる『同一労働同一賃金』の運動も力になりました。春闘でも力を合わせて賃上げを勝ち取りたい」と話しています。
ソニーの事業売却で発足した電子部品メーカー「デクセリアルズ」(本社・東京都品川区)が仙台TECから撤退しようとしていた問題でも、ソニー労組仙台支部と日本共産党などが力を合わせてストップさせました。組合に「ありがとう」と年賀状が届くなど喜びが広がっています。
ソニー売却会社を存続
労働者・自治体・議員の共同で
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電子部品メーカー「デクセリアルズ」は、2012年にソニーから日本政策投資銀行などが出資する持ち株会社に売却されて発足しました。もともとソニーで働いていた約130人が本人同意もなく転籍させられ、同じソニー仙台テクノロジーセンター(仙台TEC、宮城県多賀城市)の敷地内でそのまま働いていました。16年4月、従業員に対して、栃木県へ事業集約して「19年3月までに撤退」と説明し、遠隔地配転か退職か、どちらかの選択を迫る「転勤可否申告書」を配布しました。
地域経済を守る
ソニー労組仙台支部は転籍対象となった労働者の組合加入を受け、リストラを撤回するよう同社に要求しました。
宮城県議会では日本共産党の福島かずえ県議が16年9月、「県として雇用と地域経済を守るために、多賀城事業所の継続をデクセリアルズに働きかけていただきたい」と質問。村井嘉浩県知事は「ソニー労組仙台支部等からの要望書を受け、同社へ引き続き現状での事業継続を要望した」と答えました。
これを受けて16年後半、県経済商工観光部から同社へ、東北大学などとの連携・共同研究をうながす働きかけが行われました。
ソニー労組仙台支部は17年6月の団交で、「東北大と共同研究しながら撤退しては信用を失う。仙台TECで新規事業をおこすべきだ」と主張。会社側は「会社の思いを代弁していただいた。あらゆる可能性を検討する」と前向きに変化しました。
7月、デクセリアルズの従業員たちに「精密機械を栃木に移すのは難しい」として仙台TEC撤退計画を白紙にすることが説明されました。
仙台TECはすでに30人ほどに削減されていましたが、撤退が白紙になったことで、遠隔地配転された栃木から、仙台TECに戻される労働者も生まれています。
高い技術が話題
「デクセリアルズ」には、ソニー時代から蓄積された高い技術があります。近年は、太陽からの熱線を上方へ反射させ室内の温度上昇を抑える窓用フィルムが話題になりました。
ソニー労組仙台支部の松田隆明委員長は、「精密機械の移転が難しいことは、もともと労働者が訴えていたことでした。会社が労働組合を通じて労働者の声を聞かずに撤退につき進めば、ばく大な損失を出すところでした。労働者の生活と意見を大切にしてこそ会社は発展します」と強調しています。