2018年1月6日(土)
主張
2018年の経済
貧困と格差拡大許さない年に
2018年の経済は、アメリカ・ニューヨークの株式市場で株価が上昇、東京市場の4日の大発会でも上昇したものの、世界各地でバブルの再燃や富の偏在が懸念されており、先行き不安を抱えた幕開けとなりました。とりわけ日本経済は、政権復帰から6年目に入った安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の下で国民の所得の伸び悩みや消費の低迷が続き、大もうけを上げ、ため込みも増やす大企業や富裕層との格差が広がっています。賃上げなどで国民の暮らしを立て直し、貧困と格差拡大を許さない年にすることが国民の切実な願いです。
賃上げのない「適温経済」
アメリカや日本経済の現状を、株価が上昇している半面、物価の大幅上昇が顕在化していないことから、「適温経済」(イギリスの昔話の主人公の名に例え「ゴルディロックス」とも)ともてはやす向きも一部にありますが、その裏側での不動産などのバブルの懸念や貧富の差の拡大は深刻です。アメリカでも日本でもこれまでの中間層が姿を消し、貧困層が増えています。日本の株価が上がっているのも、大企業が輸出などで大もうけし、異常な金融緩和が続いているためで、生産や雇用が増え、所得が増えて消費が拡大するというまともな成長ではありません。
年末の「日経」が紹介したイギリスの経済紙フィナンシャル・タイムズの論評も、アメリカ、カナダ、西欧では1980年から2016年の実質所得の伸びのうち上位1%の高所得者の増加分が全体の28%を占めた一方、下位50%の増加分は9%にとどまったことを指摘し、「経済成長率そのものは国民全体の経済的福祉の改善度とはあまり関係ない」「格差拡大は最終的には民主主義をも殺してしまうかもしれない」と警告します。
日本でも、「アベノミクス」の下、円安や株高で大もうけした大企業のため込みは過去最高の400兆円を超え、一握りの富裕層が金融所得などで潤う半面、非正規で働く人など「ワーキングプア(働く貧困層)」と呼ばれる年収200万円未満の労働者は4年連続で1100万人を上回りました。厚生労働省の調査でも昨年10月の労働者の実質賃金は1年前より減少し、国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費も低迷を続けています。季節野菜など生鮮食品の値上がりだけでなく大企業製品の値上げが続き、来年10月に迫った消費税の8%から10%への増税も国民の不安をかき立てています。
株高にもかかわらずインフレが顕在化しない「適温経済」というのも、異常な金融緩和などを背景に、賃上げが抑え込まれていることの表れにすぎません。大企業には「適温」でも国民の所得や消費は冷え込む一方です。国民の暮らしへのテコ入れが必要です。
「大企業天国」やめてこそ
安倍政権が進めてきた「アベノミクス」は「世界一企業が活躍しやすい国」にすることを目標に企業の「稼ぐ力」を高めていくことを公言する、文字通り「大企業天国」の政策です。金融・財政政策だけでなく、大企業減税や「規制緩和」を繰り返しています。
首相が本気で「経済好循環」や「賃上げ」を言うなら、「大企業天国」の政策を撤回すべきです。大企業の横暴を抑え、賃上げなど暮らしを良くすることが不可欠です。