2018年1月12日(金)
主張
18年の農業・農村
暴走農政の転換で展望開こう
国連が昨年末、2019年から28年を「家族農業の10年」に指定し、国際社会が小規模・家族農業の重要な役割を認識、支援することを呼びかけました。輸出偏重や企業的農業の推進がもたらした、貧困・飢餓の拡大、地球環境の悪化を解決するには、地域に定着する家族農業を守り発展させることが不可欠となっています。日本の農業・農村も、輸入自由化や大規模化推進の下で、農業者の減少と高齢化が進み危機が広がります。先進国で最低の食料自給率は38%に低下しました。家族農業を中心に本格的に農業を再生する農政に転換することは、切実な課題です。
財界言いなりの安倍政権
安倍晋三首相は政権復帰後の5年間、農業・農村を脅かす暴走を続けてきました。農業者・国民の強い反対を無視しTPP(環太平洋連携協定)批准を強行、トランプ米政権が離脱したもとでもTPPに固執するなど農産物の際限のない自由化に突き進んでいます。
国内農政でも、競争力強化の名の下に大規模化、効率化一辺倒の路線を押し付け、戦後農政の根幹であり家族経営と地域農業を守ってきた農地・農協制度の解体を進めています。昨年は、主要農産物種子法を廃止し、多国籍種子企業の種子支配にも道を開きました。
今年は、日欧EPA(経済連携協定)や「TPP11」の調印・批准の強行、日米交渉でもTPP以上の譲歩を重ねようとしています。米政策では、生産調整の政府による配分を廃止、米農家の収入の一部となってきた米直接支払交付金(10アール7500円)もなくします。主食の需給や価格安定に対する責任の完全放棄です。生鮮食料品の流通と公正な価格形成に役割を果たしてきた卸売市場を民間企業に委ねようとしています。
いずれも現場の声に耳を貸さず、規制改革推進会議などでの財界の主張をそのまま押し付けたものです。「企業が一番活躍できる国」の農政版にほかなりません。国連が呼びかける「家族農業の10年」に逆行することは明らかです。
「こんな政治が続いたら地域がなくなる」。保守層を含め多数の農業者・住民と安倍政権との矛盾を劇的に広げています。最近の国政選挙で、野党と市民の共同候補が勝利する農村地域が生まれた背景の一つには、農政不信があります。「安倍農政ノー」の声を地域ぐるみで結集し、共同の流れをさらに発展させようではありませんか。
多くの国民も、農村の荒廃に胸を痛め、政府の調査に回答者の9割が「食料は高くても国内産で」と答えています。農山村の多面的な価値にひかれ、移住する都会の若者が増えるなど「田園回帰」の流れも着実に広がっています。生産者や消費者、行政や農協などが共同し、地産地消や地域循環型の地域づくりも各地で活発です。これらは、農業つぶしの悪政を転換する国民的多数派の形成が可能であることを示すものです。
多様な家族経営成り立つ
日本共産党は、農業を国の基幹的生産部門として位置づけ、食料自給率の向上を国政の柱に据えることを提起しています。輸入自由化や競争力一辺倒でなく、価格保障や所得補償で大小多様な家族経営が安心して生産に励める土台づくりを重視します。政府の農業つぶしをやめさせるための国民的運動の発展に全力を尽くします。