2018年1月17日(水)
原爆症 高裁も認定
近畿訴訟 新基準の誤り指摘
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原爆症の認定申請を却下された京都府と兵庫県の被爆者6人が、国の処分取り消しを求めた「ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟」の控訴審判決が16日、大阪高裁でありました。高橋譲裁判長は、6人のうち3人を原爆症と認めた一審大阪地裁判決を支持し、一審で敗訴した原告3人と国の控訴をいずれも棄却しました。
一審判決は、2013年に国が定めた新基準について「内部被ばくの影響を考慮しないなど過小評価の疑いがある」と指摘。甲状腺機能低下症の3人は原爆に被爆したことが原因と認めました。一方、狭心症や心筋梗塞、ケロイドの3人は放射線が原因とは認めませんでした。
判決について藤原精吾弁護団長は、国の認定基準が誤っていることを再度明確にしたと評価した上で「被爆者が原爆症認定を受けるためには裁判を起こさなければならないという異常事態がなお、続いているということを示している」と指摘し、全原告の救済を求めました。
ノーモア・ヒバクシャ訴訟では、新基準で対象外とされた被爆者を認定する司法判断が相次ぎました。しかし、2017年11月の広島地裁で原告12人全員が敗訴となり、大阪高裁の判断が注目されていました。
国は認定行政の転換を
判決受け全国原告団など会見
ノーモア・ヒバクシャ訴訟全国原告団と弁護団、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の代表らが16日、同日の原爆症認定訴訟・大阪高裁判決を受けての記者会見を東京都内で開きました。
原爆症認定集団訴訟全国弁護団連絡会事務局長の宮原哲朗弁護士は、「国は被爆者の実態を無視した態度を早急に改め、被爆者の立場に立った原爆症認定行政に抜本的に転換すべきだ」と訴えました。
ノーモア・ヒバクシャ訴訟全国弁護団連絡会事務局長の中川重徳弁護士は、原爆症の認定申請から裁判で認められるまでに8年、9年もかかっているとのべ、長期の裁判闘争を強いている異常さを告発しました。
日本被団協代表理事の大岩孝平さん(85)は「国を相手に裁判を起こすのは大変なこと。泣き寝入りしている被爆者がたくさんいる」と訴えました。
記者会見に先立ち代表らは厚生労働省に次の項目を要請しました。(1)原爆症認定基準を定めた「新しい審査の方針」の誤りを認め、これを変更し、全被告を救済すること(2)被爆者が「裁判をする必要がないように」被爆者援護法と原爆症認定の在り方を抜本的に改め、被爆者の命あるうちに問題を解決すること(3)唯一の被爆国として核兵器の非人道性を国際世論に訴え、核兵器禁止条約に加入し、核兵器廃絶国際運動の先頭にたつこと―。