2003年10月27日(月)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長は二十六日放映のフジテレビ系「報道2001」、NHK「日曜討論」、テレビ朝日系「サンデープロジェクト」に出演し、道路公団・郵政民営化問題のほか、選挙戦をどうたたかうかや年金、イラク問題などについて、各党の党首と討論しました(収録は二十四日)。他党の出席者は、小泉純一郎首相(自民党総裁)、菅直人・民主党代表、神崎武法・公明党代表、土井たか子・社民党党首、熊谷弘・保守新党代表。
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「日曜討論」で最初のテーマになったのは、総選挙をどうたたかうかです。
志位氏は「二十一世紀の進路を選択する選挙―自民党政治を大本から切り替えることを訴えたい」とのべました。
経済の問題では、「財界に奉仕する政治から国民のくらしを応援する政治への改革が求められている」として、(1)巨大開発の公共事業の無駄をなくして社会保障を予算の主役にすえる(2)サービス残業や長時間労働をただして、安定した雇用を増やす―と表明。「与野党双方からでている消費税増税には反対だ」とのべました。
外交の問題では、「米国いいなりの枠組みを脱して、憲法を生かした平和・独立の日本を築く」として、イラクへの自衛隊派兵の中止を主張。「憲法改悪の声も与野党双方からでているが、憲法九条は絶対に守りぬくという審判を下していく選挙にしていきたい」とのべました。
他党は「小泉政権を続けた方がいいのか、野党が政権を担った方がいいのかが大きな争点」(小泉首相)「(新民主党による)新しい政権をという選択と、脱官僚政権か官僚にのった政権かの選択という二つの選択を国民に問いかけたい」(菅氏)「三党連立政権で改革を実行していることをしっかり訴えたい」(神崎氏)「平和憲法を生かす政治をと訴えつづける」(土井氏)「国民の期待にこたえるような選挙をしたい」(熊谷氏)とのべました。
「サンデープロジェクト」では、出生率が世界で二番目の低さとなっている日本の少子化にどう対応するかが、テーマの一つとなりました。
志位氏は、「いろいろな要素がからんでいるので簡単には答えはでてこないが、やはり人間らしく働ける条件、子どもを産み育てられる条件が必要だと思う」とのべ、三つの提案をしました。
一つは、長時間労働の是正の問題です。
志位氏は、子育て中の父親が家事・育児にたずさわっている時間が、日本では一日平均四十八分なのにたいし、出生率が二・〇を超えている米国では二時間三十六分であることを紹介し、「労働時間を減らして家族だんらんの時間をきちんと保障すべきだ」とのべました。
二つ目は、若者の雇用対策です。
「いま大学を出ても就職率が55%で、フリーターがどんどん増えている」―。志位氏はこう指摘したうえで、政府の白書でも若者の就職難が少子化に拍車をかけると指摘していることを紹介。「おもに大企業が正社員を減らして、パート・アルバイトにおきかえている(という問題がある)。青年にたいする雇用責任を大企業に果たさせる対策が必要だ」と強調しました。
もう一つは、男女格差の是正です。
「日本の場合、女性の就業率のカーブが、二十代と四十代に山があって、三十代がへこんだM字型になっている。つまり働きつづけながら子どもを産み育てることができない」とのべた志位氏は、女性が働きつづけられる環境をつくるなかで出生率を上げている国があることを指摘。「長時間労働をただす、青年の雇用、男女同権で、ほんとうに人間らしい雇用の環境をつくることが大事だ」とのべました。
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「サンデープロジェクト」で、農業問題が議論になり、「農業自由化を自民党と民主党、どっちが早くやるんだ」(司会の田原総一朗氏)などと農産物の輸入自由化と株式会社参入などの規制緩和を求める発言があいつぎました。民主党の菅氏も「株式会社(参入)も検討していい」「総理がいう『農業鎖国』をあれするというのは、言葉としては賛成です」などと賛同する姿勢を示しました。
これにたいし志位氏は、農産物の輸入自由化をすすめるために「農業鎖国はできない」とした小泉首相発言について、「農家の方がほんとうに怒りを広げている」と指摘。「日本はもう食料自給率40%しかないんですよ。ここまで食料自給率が下がった国で、このまま輸入自由化をすすめていいのかという問題がある」とのべ、輸入自由化論にきびしくクギをさしました。
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「報道2001」では年金問題が取り上げられ、とくに「不足する年金財源をどうまかなうか」が議論になりました。
神崎氏は「公明党は、所得税の定率減税の見直しと年金課税の見直しによって財源を確保する」「(定率減税は)最終的にはなくす」と主張。司会者から「サラリーマンがいま減税を受けているのをなくして、実質的な増税になる」と指摘されました。
菅氏は「基礎的な部分に、将来は消費税をもってあてる」と明言。小泉氏は「議論がまだ集約していない」と、明確に答えませんでした。
これにたいし志位氏は「この問題では二つ焦点がある」とし、「第一の焦点は、基礎年金の国庫負担を法律どおり来年から二分の一に引き上げるのかどうかだ」と指摘しました。
志位氏は、来年からの二分の一への引き上げは全党がなんども一致して決めていたことであり、ただちにおこなうべきだと主張。「財源は、公共事業費の削減、道路特定財源を一般財源化してあてればまかなうことができる。公明党のような増税ではなくて歳出の削減でまかなう」とのべました。
「第二の焦点」として志位氏は、「将来、消費税に財源を頼るのは邪道だ」と指摘。「もともと社会保障は立場の弱い方々のいのちと暮らしを支えるための制度であり、消費税は所得の少ない方に一番重くのしかかる税金で、これに頼るのは本当に邪道」だとのべ、「大企業や高額所得者に応分の負担を求めることが必要だ」と強調しました。
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「日曜討論」と「サンデープロジェクト」では、イラクの復興問題がとりあげられました。
資金拠出問題について志位氏は「日曜討論」で「一番の問題は枠組みだ」とし、「今の枠組みでは、お金を使う決定権を持っているのは米英占領軍の当局だ。だからこの当局が自分たちの占領支配をつづけ、支え、固定化するために使われてしまう」と指摘しました。
小泉首相が戦費には使わないとのべたことにたいし志位氏は、政府の資金拠出決定の発表文に“治安対策”が明記されていることをあげ、「米軍がやっている掃討作戦に使う道がちゃんと開かれている」と指摘。「占領支配を支える形での資金の拠出は、イラクの国民にとっても有害だ。だから、ロシアもフランスもドイツもお金を出さないと(いっている)」とのべ、「米英軍主導から国連中心の枠組みに変えて、イラク人に主権を返還する。そのもとで非軍事のさまざまな支援をやるべきだ」と主張しました。
日本の拠出額が世界でも突出していることについて神崎氏は「多すぎることはない」と発言。菅氏は「ある程度の協力はやるべきだ」とのべました。
イラクへの自衛隊派兵について小泉首相は「日曜討論」で「できるんだったら年内にやった方がいい」と表明しました。
志位氏は「自衛隊を派兵するのは非常に危険であり、『戦闘地域には送らない』というイラク特措法の建前に照らしても、そういう状況ではないというのがイラクの現状だ」と指摘しました。
一時、六百五十人いた国連イラク事務所の外国人スタッフが三十人以下になっており、国連でも安全が確保できなくなっていることを紹介。「アナン国連事務総長が『占領がつづく限り抵抗がつづく』といったように、米軍がいるところが戦闘地域になる。自衛隊が行けば、そこが戦闘地域になる」と強調しました。
さらに「ここにも枠組みの問題がある」とのべ、米英軍主導の占領支配がイラク国民の怒りと憎悪の対象になっており、「(復興の)枠組み自体を国連中心にいま移すことを国際社会は求めている」と強調しました。
「サンデープロジェクト」で、小泉首相は「戦争に行くんじゃない」と弁明。コメンテーターから「(イラクは)現実には戦争状態だ。政府の説明は現実にもとづかない」と指摘されました。
小泉首相が「各国もそれぞれ軍隊を派遣している」とのべたのにたいし、志位氏は「軍隊派遣はわずか三十数カ国。(フランス、ドイツ、ロシア、中国をはじめ)百六十カ国は派遣していない」と批判。政府がC130輸送機を派遣しようとしているバグダッド空港では、米軍のC130が五回も地対空ミサイルで攻撃されていることを指摘し、「(自衛隊も)そういう(攻撃の)対象になる。憲法違反になることは明りょうだ」と指摘しました。
菅氏は、イラク人による政府と国連から要請があった場合、「自衛隊を含めて派遣を検討すべきだ」とのべました。
「日曜討論」では、日米関係のあり方について議論になりました。
志位氏は「日米安保条約をなくして、本当の独立国といえる日本を」「対米関係は対等平等に」という日本共産党の立場をのべたうえで、「いま安保条約にたいする是非をこえて問題になるのは、国連憲章のルールを守るのかどうかにある」とのべました。
米国によるイラクへの先制攻撃の戦争についてアナン国連事務総長も「国連憲章に対する根本的な挑戦だ」と批判しているのに、小泉首相は国会での志位氏の追及に、米国にたいする批判であることすら認めなかったと指摘。
「そういうアメリカいいなり、アメリカのルール無視になにもいえない日本でいいのかがいま問われている」と力説しました。
小泉首相は「日米同盟の重要性は、いままでになく高まっている」と繰り返すばかりでした。
菅氏は、司会者から「『成熟した日米同盟』といっているが」と問われ、ベーカー駐日米大使とともに朝食をとったことにふれ、「(その際に)アメリカとの関係はペリー来航からの百五十年で最も重要な関係だったし、これから百五十年間においても最も重要な関係だと伝えた」とのべました。