日本共産党
総選挙にのぞむ日本共産党の政策【第3部】 <1>〜<3>

総目次】【第1部】【第2部】【第3部1〜3】【第3部4〜12】【分野別の政策

【第3部】当面の重点政策<1>〜<3>

  1. 社会保障を予算の主役にすえ、年金・医療・介護など、国民が安心できる制度を確立する
  2. 公共事業の大改革をはかる――予算規模は25兆円、内容は国民生活優先
  3. 国民のくらしと権利をまもる「ルールある経済社会」への前進をはかる

【第3部】 当面の重点政策<1>〜<3>

〈1〉社会保障を予算の主役にすえ、年金・医療・介護など、国民が安心できる制度を確立する

 小泉内閣は、医療、年金、介護など社会保障のあらゆる分野での負担増と庶民増税で、あわせて4兆円もの負担増を国民に押しつけることを決め、すでに、医療費のサラリーマン本人負担3割、保険料値上げ、年金給付の引き下げ、介護保険料の値上げ、雇用保険料の値上げと失業給付削減、発泡酒増税など、3兆円を超える負担増を実施しました。

 それにくわえ、来年以降、所得税・住民税を7300億円増税(配偶者特別控除の廃止)すること、消費税の課税を強化(免税点の引き下げ等)して零細な業者と消費者に6300億円の増税をすることを決定しています。さらに、年金給付は、今年、「物価スライド凍結解除」による4000億円の給付削減をしたばかりなのに、来年も、8000億円の給付削減が計画されています。これから来年以降にかけて、新たに2兆円規模の増税・負担増が国民のくらしにおそいかかろうとしています。

 そして、来年の国会でも、年金制度の抜本的な改悪をやろうとしています。年金額を自動的に減らしていく仕組みや保険料の段階的な引き上げなどの大改悪で、そのための法案を、この総選挙後にもつくろうとしています。“痛み”をがまんすればするほど、新しい“痛み”が押しつけられる――まさに際限のない負担増です。

 いまや社会保障制度は、国民のくらしをささえるという本来の機能を大きく失い、多くの国民を苦しめ、生活不安をかきたてる大きな要因になっています。不況のときだからこそ、社会保障に予算を重点的にふりむけ、国民のくらしを最優先させるべきです。日本共産党は、社会保障を予算の主役にすえ、国民が安心できる制度を確立します。

(1)年金大改悪に反対し、3つの改革で将来に安心がもてる年金制度をつくる

 小泉内閣は、来年の年金見直しにあたって、これまでの年金制度上の約束ごとを反故(ほご)にして、少子化や経済環境の変化にともなって年金額を自動的に減らす仕組みに変えようとしています。この方式に移行すると、厚生労働省の試算で、年金水準は、現役労働者の手取り賃金の約60%から、将来的には52%にまで下がり、受け取る年金額は、いまより12%程度も減ることになります。しかもこれは、保険料率を現在の13・58%(労使折半)から、段階的に20%(同)にまで引き上げるという、大幅な負担増を前提にした計画です。いま年金を受給している高齢者にたいしても、来年には、物価スライドのマイナス改定と年金課税強化の両面から、かつてない年金カットが実施されようとしています。こんな年金大改悪を許せば、くらしも経済もめちゃくちゃになってしまいます。

 日本共産党は、来年の年金大改悪に反対するとともに、つぎの三つの改革で、将来に安心がもてる年金制度をめざします。

 第1の改革――基礎年金への国庫負担を、現行の3分の1からただちに2分の1に引き上げる。その財源は、公共事業費の削減、道路特定財源などの一般財源化、軍事費の削減など歳出の見直しによってまかなう。

 第2の改革――リストラの横暴をおさえ、雇用と所得をまもる政策への転換で、年金の安定した支え手を増やす。

 第3の改革――175兆円にものぼる巨額の年金積立金を計画的に活用する(積立金額は厚生年金基金が代行している部分を含む)

 国民年金は、4割近い加入者が保険料を滞納するなど、深刻な空洞化が起きています。定額制となっている国民年金の保険料は、収入に応じたものにあらためます。年金受給のために必要な最低25年の現在の資格加入期間を10年程度に短縮し、加入期間に応じて年金が受給できる仕組みにあらためます。無年金障害者の救済をいそぎます。

 さらに将来的には、基礎年金部分を発展させて、「最低保障年金制度」を創設します

 厚生年金、共済年金、国民年金の共通の土台(1階部分)として、加入者全員に一定額の年金が支給される「最低保障年金制度」を創設します。そのうえに、それぞれの掛け金に応じて、年金が上積み給付されるようにします(2階部分)。

 「最低保障年金」の財源は、国庫と事業主の負担でまかないます。事業主の負担分については、“所得の多いものは多く、少ないものは少なく”という経済民主主義をつらぬきます。日本では大企業の社会保障への負担がヨーロッパなどと比べ著しく低くなっています。中小企業の負担は、現在の負担より重くならないようにします。

 憲法25条は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しています。日本共産党は、この立場から、1983年から「最低保障年金制度」の創設を提案してきました。すべての国民が安心して老後をおくれるようにするために、その実現にむかって前進していきます。

(2)3割負担などの医療改悪を元にもどし、国民の命と健康をまもる

 昨年10月に老人医療費の負担額が引き上げられたために、在宅酸素療法を中断する人が続出するなど、命にかかわる深刻な事態が起きています。今年4月からは、サラリーマンなどの患者負担も3割に引き上げられ、深刻な受診抑制が起きています。このうえさらに、政府は医療の「抜本改革」と称して「高齢者医療保険」を創設し、すべてのお年よりから医療保険料を徴収するなどの計画をすすめています。

 当面、02年の医療改悪前の状態にもどすとともに、これ以上の医療大改悪をやめさせるために、つぎの三つの改革をすすめます。

 ――減らし続けた医療費に占める国庫負担の割合を計画的に元にもどす。

 ――世界一高い薬価や高額医療機器が医療費を押し上げている仕組みにメスをいれる。

 ――予防・公衆衛生や福祉施策に本腰をいれ、国民の健康づくりを推進する。

 国民健康保険の深刻な危機を打開し、住民の命と健康をまもります。国民健康保険証の取り上げをやめさせ、保険外負担の拡大に反対し、保険で必要かつ十分な医療が受けられるようにします。

(3)だれもが安心して利用できる介護保険制度に改善する

 今年4月から、65歳以上の介護保険料が全国平均で13%引き上げられ、低所得者は必要なサービスもますます切り縮めざるをえなくなっています。政府は、介護保険制度の見直しに向けて、(1)保険料の徴収対象を現行の「40歳以上」から「20歳以上」に広げる、(2)障害者施策を介護保険と統合して、障害者からも保険料を徴収する――などを検討しています。このような国民負担増に反対するとともに、だれもが安心して利用できる制度をつくります。

 ――保険料、利用料の免除・軽減制度を国の制度として確立します。

 ――介護給付費への国庫負担を現在の4分の1から2分の1に引き上げます。

 ――特養ホームを計画的に増設し、待機者の解消をはかります。

 ――短期入所(ショートステイ)の緊急用ベッドの確保など、高齢者が地域で安心してくらせる条件を整備します。

(4)福祉を拡充し、だれもが安心して過ごせる地域社会をつくる

 乳幼児医療費無料化を国の制度として実現させ、各自治体の独自施策を上乗せできるようにします。住民・行政・医療関係者の連携で小児医療供給体制を整備します。

 長引く不況のなかで生活保護の役割がますます重要になっています。「老齢加算」「母子加算」の廃止など、政府の05年に向けた保護費減額の計画に反対します。児童扶養手当の削減計画を中止します。難病患者の医療費自己負担制度をやめ、無料化を復活します。

 障害者が全国どこでも必要なサービスを受けられるように、サービス基盤整備を集中的にすすめるなど、支援費制度の改善・拡充をすすめます。障害者プランの拡充、雇用の確保、「障害者差別禁止法(仮称)」の制定などを推進し、障害者の「全面参加と平等」を実現します。

(5)社会保障のための財源(その1)――「逆立ち」財政をあらためる歳出改革

 小泉内閣や自民党・公明党、財界などは、社会保障の負担増や給付減は「少子高齢化だから仕方がない」といいます。しかし、国民が払った税金がどう使われているかを見れば、これが間違っていることははっきりします。日本は、国民が国と自治体に払った税金のうち社会保障の公費負担としてもどってくる比率は29%で、アメリカ47%、ドイツ44%、イギリス43%、スウェーデン43%などからみればたいへん低い水準です。

 税金の使い方、予算の優先順位を転換すれば、社会保障を充実させる財源を確保する展望が大きく開けます。

 ――第1に、90年代に50兆円にまで膨張した公共事業を段階的に半減させます。バブル期前の水準の25兆円にまで段階的に引き下げれば、財投資金などを除いても、新たに10兆円程度の財源をつくりだすことができます。それでもアメリカを上回る水準の公共事業を確保でき、巨大開発中心から、雇用や地域経済への波及効果が大きい福祉・環境型に転換すれば、国民に必要な社会資本整備は十分可能です。

 ――第2は、5兆円にまで膨張した軍事費を「聖域」にせず大幅軍縮に転換させます。とくにヘリコプター空母や空中給油機など海外派兵用の新規装備購入計画を中止すること、1兆円単位での巨額の財政支出をともなう「ミサイル防衛戦略」への参加を中止すること、世界で類のない巨額の米軍への「思いやり予算」を廃止することは、急務です。

 この二つの改革で、10兆円以上の財源を、社会保障を中心にした国民のくらしのために、新しく振り向けることができます。

(6)社会保障のための財源(その2)――“所得の多いものは多く、少ないものは少なく負担”という経済民主主義の大原則に立った歳入改革

 将来の高齢化社会をどうささえるか、その財源をどこに見いだすかは、21世紀の日本社会をどうするかという点でも、大きな問題です。

 将来の社会保障の財源をどうするかを考えるとき、経済民主主義の原則をつらぬく立場にたつことがカギです。ところが、消費税の大増税で財源をつくるという議論があります。しかし、低所得者ほど負担の重い消費税は、「反福祉的」な税制度であり、社会保障財源としていちばん不適当な税制です。しかも、この道は、国民のくらしも、景気・経済も破壊することは明らかです。

 自民党政治は、消費税の導入・増税と引き換えに、法人税と高額所得者中心の所得税の減税を繰り返してきました。その結果、消費税導入前の税制と比べると、法人税率は42%から30%に引き下げられるなどの減税がおこなわれ、国税、地方税あわせて大企業だけで年間約3兆円、トヨタ1社だけでも2200億円も法人税負担は軽減されています。

 大企業・高額所得者に応分の負担をもとめる、税制と社会保障制度の抜本的改革をおこないます。財界は、企業の社会保障負担を増やすと国際競争力がなくなるといいますが、日本の企業の税と社会保障負担は、とくに社会保険料負担が低いために、国民所得比で12%であり、イギリス15%、ドイツ18%、フランス24%、スウェーデン22%にくらべて、5割から8割にすぎません。大企業に国際水準にてらして適切な負担をもとめる改革をすすめます。

 また、法人税にゆるやかな累進制を導入するとともに、受取配当益金不算入制度、外国税額控除、研究開発減税など、もっぱら大企業向けの優遇税制をあらためます。

 高額所得者も所得税・住民税の最高税率引き下げなどによって、消費税導入前とくらべて1・6兆円も減税になっています。累進制を再建します。土地・株式など資産所得への分離課税制度をなくし総合課税にします。

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〈2〉公共事業の大改革をはかる――予算規模は25兆円、内容は国民生活優先

 日本の公共事業費は、90年代に年間50兆円にも異常に膨張しました。これをバブル前の水準の25兆円程度にまで削減していきます。それでも国土面積で25倍、人口で2倍のアメリカを上回る規模ですから、国民生活に必要な社会資本整備は十分できます。6兆円にのぼる道路特定財源など、公共事業費が自動的に膨張する「仕掛け」も廃止します。

 内容も、巨大開発中心から、「生活・福祉・防災・環境」重視に、大きくきりかえます。国民生活優先の公共事業は、巨大開発より、地域経済や中小企業、雇用への波及効果がずっと大きくなります。

(1)必要性のないダム、空港、港湾などの公共事業にメスを入れる

 小泉内閣は、「公共事業の改革」といいながら、だれが見てもムダと浪費、環境破壊という大型事業を相変わらず推進しています。

 熊本県の川辺川ダムは、“ダムの建設はムダだ”と地元住民が反対し、川辺川の自然をまもれという運動が大きくひろがり、ついに裁判所が利水事業の違法性を指摘し取り消す判決を下しました。ところが、政府はいまだに「必要なダム」と言い張っています。諫早湾干拓事業や、自民党の中からさえ疑問や批判の声があがっている関西空港2期工事と神戸空港建設もストップがかかりません。

 小泉内閣のやっていることは、事業量は減らさず、工事価格の引き下げの範囲内で予算を圧縮するだけという、とうてい「改革」とはいえないものです。

 大型公共事業を総点検し、事業の中止を含む大胆なメスを入れ、ムダと環境破壊の公共事業をやめさせます。

(2)新手のムダ――「都市再生」事業にストップをかける

 小泉内閣が目玉にしている「都市再生」は、一部の大都市に公共事業を集中させるものです。その多くは、大規模工場跡地を買い上げ、バブル期に計画され頓挫していた開発を焼き直したものです。すでに東京など大都市圏では、オフィスビルも、大型マンションも、ホテルも供給過剰が指摘され、「空き部屋」問題が深刻になっているにもかかわらず、新たな巨大ビルを建設し、その周辺整備を公共事業でおこなうというのは、新手のムダとしかいいようがありません。そのうえに住民の追い出し、高層ビルの林立による日照権の侵害、電波障害、自動車の流入による交通渋滞、大気汚染、騒音、ヒートアイランド現象、大量の廃棄物の発生などの大問題を引き起こします。

(3)道路特定財源などを一般財源化し、ムダな公共事業でなく社会保障などくらしのために活用する

 道路特定財源は、ガソリンにかかる揮発油税、自動車重量税など、国と地方あわせて約5・7兆円もあり、電源開発促進税、航空機燃料税などの公共事業特定財源をあわせると7・7兆円にのぼります。こうした「特定財源」という仕組みが、公共事業を膨張させる「仕掛け」になっています。

 小泉首相は、国民の批判をうけ、「特定財源の見直し」を公約し、昨年は、ほんの一部の2200億円を「一般財源」にまわしただけで、「できないといわれてきたことをやった」などと「改革」の成果を誇りました。ところが、たった1年で、逆戻りにし、今年度は全額道路建設にまわし、しかも、新たに高速道路建設にも使えるようにしています。

 ムダな公共事業をおさえるうえでも、財政危機のもとで、国民の払った税金を有効に使うという面でも、道路特定財源などを、使い道を特定しない一般財源とし、社会保障やくらしにも活用します。

 道路建設は、特定財源でなく、他の公共事業と同じように、全体の予算編成のなかで、生活道路中心に必要な予算を配分するように改革し、「税収が入った分だけ道路をつくる」というムダを生み出す構造を改革します。

(4)道路公団改革――「民営化」でなく、ムダな高速道路の建設中止、債務の計画的返済、組織のスリム化をすすめる

 過大な交通量予測をおこない、いいかげんな収支計算をもとに次々に高速道路を建設するという、これまでのやり方を、これ以上つづけるわけにはいきません。すでに道路4公団は、あわせて40兆円もの債務をかかえており、これ以上、ムダな建設をつづければ、新たな国民負担・税金投入となることは必至です。

 小泉内閣は、「民営化」でこの問題を解決するとしています。しかし、40兆円もの債務を残したままでは、民間会社を設立することも、株式を上場することもできません。国鉄がJRになった時のように、「民営化」するときには、必ず、この巨額の債務を新会社から切り離し、国民が引き受けることになります。道路公団と自民党政治によってつくられた巨額の借金を国民に押しつけるための「民営化」には反対します。

 日本共産党は、つぎの三つの内容で、道路公団の改革をすすめます。

 (1)高速道路整備計画を廃止し、新たな高速道路建設は凍結・見直す……ムダな高速道路建設がすすむ大もとには、国土開発幹線自動車道建設審議会(国幹審)が決めた高速道路整備計画があります。政府は、この計画にもとづく9342キロの建設枠をいまだに見直しもせず、約20兆円が必要とされる残りの2100キロを何が何でも建設しようとしています。こうした「総枠先にありき」のやり方が、採算もとれず、必要性も乏しい高速道路建設を助長してきました。

 ほんとうに「改革」をする気なら、まず、この整備計画をきっぱり廃止することです。そして、新たな高速道路建設は、いったん凍結し、抜本的に見直します。採算性がなくても地域経済や福祉・医療などの観点からどうしても必要な高速道路については、交通需要や赤字額などを正直に公表し、それらを含めて国民合意が得られるならば、国の責任で建設すべきです。

 (2)債務負担を計画的に返済し、料金の段階的引き下げ、将来の無料化にむかう……40兆円の債務は巨額ですが、4公団あわせて年間2・5兆円の通行料金収入があります。新たな建設さえ中止すれば、維持・管理費を考慮しても、債務返済にまわす財源を確保することは可能です。そして、国土交通省のOBなどが天下り、ファミリー企業が仕事を独占するといった、癒着と利権の構造癒着にメスを入れて、効率的な経営をすすめれば、そこからも新しい財源が生まれます。日本共産党は、新たな国民負担・税金投入を極力回避し、債務問題を解決しながら、高速道路料金を段階的に引き下げ、返済が終わった時点で高速道路を無料化します。

 料金収入による計画的な債務返済をやめ、「料金無料化」を性急にすすめれば2兆円規模の税金を新たに投入しなければなりません。これは税金の使い方として、優先順位を間違ったものです。

 (3)道路4公団は、「天下り」を禁止し、ファミリー企業を廃止し、国民の管理・監視のもとで債務返済と維持・管理を運営する公共企業体として再生させる……道路4公団は、債務の計画的返済と維持・管理、料金の段階的引き下げと将来の無料開放という仕事にふさわしい形態への改組・縮小が必要です。

 国民に、経営の実態、債務返済の状況、料金が適正か、などの経営情報がきちんと公開される運営に徹します。そのために、国会への報告とともに、利害関係のない専門家や国民代表などによる第三者機関をつくり、監視します。国土交通省などからの「天下り」役員は禁止します。建設部門の廃止はもとより、組織の徹底したスリム化をはかります。ファミリー企業を廃止し、ためこんだ黒字は債務返済にまわします。公正でまともな民間企業との関係をつくります。

(5)「生活・福祉・防災・環境」重視の公共事業をすすめる

 低家賃の公共住宅の供給、負担と環境に配慮した下水道・合併浄化槽、生活道路などの生活関連施設、特養ホームや保育所の新増設など福祉関係施設、学校などの耐震化、がけ崩れ防止、老朽化したため池の改修など災害に強いまちづくり、バリアフリー化、風力や太陽エネルギー、バイオマス、小型水力発電などの自然エネルギーの開発、「みどりのダム」である森林の保全などは、地域の経済・社会をささえる力となるものです。「生活・福祉・防災・環境」型の公共事業を大いに推進します。

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〈3〉国民のくらしと権利をまもる「ルールある経済社会」への前進をはかる

 繰り返されるリストラと雇用不安の拡大は、日本経済と社会に、経験したことのない新しい危機をもたらしています。

 勤労者世帯の年収は、この1年間で23万円、6年前からだと77万円も減少してしまいました。雇用危機は、国民の所得減少と生活不安の拡大をもたらし、景気回復の大きな足かせになっています。

 サービス残業・長時間労働の横行は、ストレスと疲労を蓄積させ、職場での「心の病」や過労死・過労自殺の増大など労働者の生命と健康を脅かし、家族をふくめた人間らしい生活を崩しています。フリーターなど不安定雇用の増大は、年金未加入者の激増などによって社会保障制度の基盤を掘り崩し、若者の経済的自立を妨げ、少子化の大きな要因になっています。このままでは、国民のくらしと日本経済に取り返しのつかない事態をまねくことになります。

 リストラと不況の悪循環は大企業自身の経営も圧迫しています。長時間労働やフリーターの急増は、社会全体の生産性を低下させ、日本経済の成長の妨げにもなっています。ものづくり技術の継承問題や工場での事故の多発も深刻です。企業をふくめた「持続可能な社会」のためには、雇用をはじめ「企業の社会的責任」をはたすことがますます重要になっています。

 大企業にあたりまえの「社会的責任」をはたさせ、安定した雇用と人間らしい生活と社会、環境との共生などをはかり、持続可能な経済社会をきずきます。

(1)労働者の雇用と労働条件のために

 完全失業者は350万人を超え、失業期間も長期化しています。ところが小泉内閣は、大企業のリストラを応援するように労働法制を改悪し、パート、契約、派遣など、いつ仕事がなくなるかわからない不安定な働き方を急速に広げています。安定した雇用の創出・確保をすすめる雇用政策への転換がもとめられます。

 (1)「安定した雇用を増やし、雇用危機を打開するための4つの緊急提案」を実行する

 ――サービス残業・長時間労働をなくして、新しい雇用を増やす……サービス残業は、平均でも年間200時間を超えており、この分を新規雇用拡大にまわせば160万人分もの雇用が生まれます。サービス残業・長時間労働をなくすことは、人間らしい働き方をとりもどすためにも急務です。

 ――未来をになう若者に仕事を。政府と大企業の責任で若者の雇用拡大を……完全失業者の半分は34歳以下の若者で、フリーターも急増しています。中小企業は、若者の正社員を増やしていますが、大企業は108万人も減らす一方で、パート・アルバイトを37万人増やしています。大企業は、新規採用抑制を中止し、若者を正社員として採用すべきです。政府も、大企業に雇用責任をはたすよう、強く働きかけるべきです。

 ――福祉、医療、防災、教育など国民のくらしに必要な分野での人手不足を解消する……国民生活に必要な分野での人手不足は、住民サービスの低下にもつながっています。保育園への待機児童は増え続け、介護や医療でも、現場は深刻な人手不足が続いています。防災でも、市町村の目標に対して消防士は5万人も足りません。また教員は、「30人学級」の実施や複数教員配置などをすすめ、新規採用を増やしていくべきです。

 ――国が、自治体を財政的に支援し、地域での雇用対策をすすめる……地方自治体の雇用創出計画に、国が財政支援をおこなう仕組みを強化し、自治体が、地域経済の振興と雇用確保を効果的にすすめられるようにします。

 (2)乱暴なリストラを抑え、雇用をまもるルールをつくる

 日本では、労働者と雇用をまもるルールがきちんと確立していません。労働者の人権を踏みにじった違法、脱法のリストラが横行し、希望退職や転籍の強要で大量の人員整理、事実上の整理解雇が大規模におこなわれています。人間らしい社会は、人間らしい労働生活があってこそ実現します。日本共産党は、労働者の人権をまもり、人間としての生活を尊重した労働契約のルールを確立する「解雇規制・雇用人権法」を提案します。

 ――正当な理由のない解雇の禁止、人員整理計画の事前協議制の確立……希望退職の募集、工場閉鎖・縮小など雇用削減の計画は、労働者代表、関係自治体との事前協議を義務づけます。裁判所の判例で確定している整理解雇四要件((1)解雇しないと会社が存続しない(2)解雇回避の努力(3)人選が合理的(4)労働側との協議をつくす)をいそいで法制化します。

 ――希望退職や転籍など「退職」を強要するための人権侵害を許さない……転籍や希望退職にあたっての強要行為を厳格に規制します。転勤させるさいの家族的責任、家庭生活への配慮を義務づけます。

 ――派遣やパート、有期雇用などの労働者の雇用と権利をまもる……パート労働者への差別・格差をなくし、派遣労働者が、派遣先で正社員となる道を広げます。有期雇用は、臨時の仕事など合理的な理由がある場合に限定します。

 (3)失業者への生活保障と仕事の対策をすすめる

 (1)雇用保険の給付期間を一年間まで延長する、(2)雇用保険が切れ、生活が困窮する失業者への生活保障制度を創設する、(3)子どもの学費・授業料などの緊急助成制度、住宅ローンのつなぎ融資など、家庭と家族を維持するための制度を創設する、(4)臨時のつなぎ就労の場(新しい失対事業)を国と自治体が協力してすすめる――という緊急対策をとります。

(2)金融制度は公共的責任を優先に

 小泉内閣発足後の2年4カ月に、4万4000件もの企業倒産が起きています(負債1000万円以上、帝国データバンク資料)。それ以前に比べて9%以上もの増加です。中小企業は、不況による売り上げの落ち込みのうえに、貸し渋り・貸しはがしや金利引き上げなど、金融の道を断たれて、次々に倒産や経営難においこまれています。

 経済の現場に資金を安定的に供給することは、金融の公共的責任です。ところが小泉「構造改革」は、この公共的責任をないがしろにし、日本の金融を異常事態におとしいれてしまいました。すでに大銀行を中心に33兆円もの公的資金が投入され、日銀の「超金融緩和」策で銀行には「ジャブジャブ」といわれるほどの潤沢な資金が供給されています。ところが、その資金が銀行から先にまわらず、経済の現場、とりわけ地域経済をささえている中小企業は、正反対の「超金融引き締め」状態になっています。小泉内閣が、経済の動向も、経営の実態も無視して、乱暴な不良債権処理を強行しているために、“経済の血液”である金融を「収縮」させてしまったからです。

 小泉内閣発足前とくらべて、金融機関の企業向け貸し出しは61兆円も減少しました。このため、黒字の企業まで資金繰りの困難から倒産するという事態が起きています。不良債権処理のテンポをいっそう速める「竹中プラン」が強行されれば、中小企業の倒産がますます増えることは必至です。

 いくら超低金利にしても企業に資金はまわらず、庶民の貯蓄の利子だけが消えてしまった――どちらをとっても経済に大きなマイナスです。中小企業の経営と庶民の貯蓄をまもる金融行政に転換します。

 (1)中小企業を生かす金融行政に転換するため「4つの緊急措置」を実施する

 ――政府が銀行に押しつけている「1年間で5割、2年間で8割」「04年度までに不良債権比率を半減」などの機械的な方針で、貸し渋り、貸しはがしが強まり、中小企業が倒産に追い込まれています。こうした機械的な「不良債権処理」スケジュールを撤回させます。

 ――本業の経営が黒字でも、資産デフレで担保価値が下がったら「不良債権」扱いするといった中小企業の資産査定方式を、企業経営の実態を反映したものにあらためさせます。

 ――わが党も要求して、国民の運動で実現した「借り換え保証制度」をはじめ、中小企業への公的金融支援を拡充します。

 ――ヤミ金融をはじめ、高利貸し、暴力金融の被害を根絶します。

 (2)利用者・国民はそっちのけで、銀行の都合のための郵政民営化に反対します

 国営の郵政事業の主人公は、利用者である国民です。ところが、小泉内閣があげる民営化の理由は、「郵貯・簡保が民業を圧迫している」「金融市場をゆがめている」など、もっぱら銀行の都合ばかりです。だから、小泉首相は、郵政民営化を声高に主張しますが、郵貯や簡保を利用している国民へのサービスはどうなるのかを、具体的には何も示さないのです。

 ――庶民の貯蓄をまもる……郵便貯金は、零細な国民の貯蓄をまもることを目的とした国営の事業です。「虎の子」の生活資金を安全に貯蓄したいという国民の願いを国営事業として運営していくのは当然です。最近の世論調査でも、国民の6割が「郵政事業は国営のままでよい」と答えています。

 銀行業界の年来の主張にそって、銀行の競争相手である郵貯を「弱体化・解体」する、そのためには庶民の貯蓄がもっと冷たくあつかわれてもかまわない、という郵政民営化に反対し、郵便事業をふくめて国営事業としてのサービス向上をめざします。

 ――郵貯・簡保の資金を地域経済・中小企業に供給する仕組みを強化する……銀行の貸し渋り・貸しはがしが激しさを増し、郵貯や簡保で集められた庶民の大切なお金を、国民のくらし・営業の資金としてまわるようにすることも、ますます重要になっています。中小企業、住宅や福祉・医療施設などへの資金供給を確保することは、経済にとっても、社会にとってもきわめて重要であり、そのための公的金融の役割はいっそう高まっています。郵貯・簡保の資金を、ムダな公共事業につぎ込んだり、投機市場で「自主運用」するのではなく、国民生活向け財投機関への出資をふやして、中小企業と地域経済に良質な資金を供給できるようにします。

 郵政事業をほんとうに国民に開かれた国営・公営の事業にするためには、大きな改革も必要です。何よりも、郵政官僚を参院選で自民党の比例候補としてかつぎ、特定郵便局長や郵政職員を締め付けて自民党票をかき集めた高祖派選挙違反事件や特定郵便局長への渡切費流用事件のように、自民党の郵政事業私物化、特定郵便局長の「世襲制度」をはじめ利権と不正に徹底的にメスを入れることが大切です。

(3)中小企業の経営の発展のために

 中小企業は、事業所数で99%、労働者数の約7割を占める日本経済の主役です。中小企業の経営が上向かなくては、この大不況からもぬけだせません。

 政府の中小企業対策費は、わずか1729億円で、米軍への「思いやり予算」(2460億円)の7割しかありません。中小企業の技術開発支援、仕事づくりへのきめ細かい支援策、下請け被害の防止、地場産業対策の強化など、中小企業向け予算を大幅に増やします。そして、中小企業の経営をまもるルールを確立します。

 (1)大型店の出店・撤退を規制し、消費税の免税点引き下げに反対する

 大型店の身勝手な出店や撤退を規制するルールを確立し、商店街の衰退に歯止めをかけます。零細業者に重い負担を押しつける消費税の免税点引き下げなどに反対し、来年4月からの実施中止をもとめます。

 (2)納税者の権利をまもる「納税者憲章」を制定する

 サミット諸国で「納税者の権利憲章」がないのは、日本とロシアだけです。納税者の申告納税権、調査の事前通知やプライバシー保障、立会人を置く権利など適正な税務調査を受ける権利、税務署の推計課税を限定し、処分に不服のある場合の救済をもとめる権利など、納税者の権利をまもるルールを確立します。

 (3)親企業と下請け企業との対等平等な関係を築く

 欧米では、親企業と下請け企業との関係は「対等平等」が原則ですが、日本には、弱い立場の下請け企業をまもるルールがあまりにも貧弱です。単価はたたかれ、納期は無理を言われ、それがいやなら仕事を打ち切ると脅される、こんな大企業の横暴勝手があたりまえのようになっているのは日本だけです。

 下請代金支払遅延防止法、下請中小企業振興法という法律がありながら、これに違反する行為が横行しています。行政の側から系統的に「立ち入り検査」をおこない、大企業・親会社にペナルティーを科すなど罰則を強化し、ただちに是正させます。

 長年の中小企業団体のみなさんの運動と日本共産党の要求が実り、下請二法の対象が製造業からサービス業などに拡大されました。実効あるものにするためにも、下請検査官の大幅増員が必要です。さらに、発注元大企業の責任を二次以下の下請けにも及ぶようにする、一方的な発注の打ち切りや大幅な発注削減、終業後発注・翌日納品、休日前発注・休日明け納品などを規制するルールをつくります。

(4)人間と環境の共生のために

 小泉内閣は、「規制緩和」至上主義にとらわれ、環境保全や公害規制など必要な制度化にまともにとりくもうとしていません。日本の経済社会を持続可能なものにするために、環境との共生をはかるルールの確立が急務になっています。

 ――地域レベルでの環境破壊をおさえる……各地で起きている環境汚染問題の解決には、少なくとも、(1)汚染者負担の原則(2)予防原則(3)住民参加(4)徹底した情報公開――というルールの確立が欠かせません。

 大量の不法投棄が繰り返され、周辺の汚染が危険視されているゴミ問題では、ごみの“焼却中心主義”“埋め立て中心主義”からの脱却をはかることが必要です。設計・生産段階からゴミになるものを減らすために、OECD(経済協力開発機構)も推進してきた「拡大生産者責任制度」のルールにたって、自治体と住民に負担を押しつける現行のリサイクルシステムを抜本的に見直し、企業の責任と負担をもとめることが必要です。産廃の不法投棄には、徹底した立ち入り検査を実施し、不法投棄のルートと関与者の解明、違反者はもちろん排出者の責任による撤去を実施させます。

 政府が導入を急がせたごみ処理システムで爆発事故やトラブルがあいついでおり、改善と補償を国とメーカーの責任でおこなうべきです。

 ――ディーゼル車による環境汚染の規制……西淀川、東京など各地の大気汚染訴訟判決では、健康被害と自動車排ガスとの因果関係を認めました。判決は、健康被害が予見できたにもかかわらず、乗用車にまでディーゼル化をすすめたことなど、自動車メーカーに社会責任上問題があったことも指摘しています。現在も被害者は増え続けており、早期・迅速に救済策を講じます。メーカーに必要な情報公開を義務づけ、環境・製品アセスメントを強化するよう要求します。判決をふまえ、新たな措置をとることもふくめて、すべての被害者の迅速な救済を国・自治体にもとめるとともに、使用中のディーゼル車の汚染物質除去装置をメーカーが開発して社会的責任をはたすよう要求します。

 ――地球的規模での環境破壊をおさえる……京都議定書にもとづく温暖化ガスの削減目標の達成は、日本の世界にたいする約束です。しかし、政府があてにしていた原発の新増設がゆきづまる一方、産業界が「自主的なとりくみの尊重」と言い張っているために、目標の達成が危ぶまれています。EU諸国で削減のために導入されている政府と産業界との協定制度を日本でも導入し、産業界は地球環境の分野でも社会的責任をはたすべきです。

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