2024年5月16日(木)
きょうの潮流
金曜8時の放送だったので「金八」と主人公の名が決まり、テレビドラマ「3年B組金八先生」が誕生しました。脚本家・小山内美江子さんの訃報にふれ、45年前に始まったドラマが思い起こされます▼受験競争、いじめ、学級崩壊と中学生たちが直面する困難な問題に切り込みました。妊娠・出産の回では、世間体に抗(あらが)う当事者たちの肉声が響きました。中学生の視聴者から大きな支持を得たのもうなずけます▼小山内さんは、母親である自らの目線で脚本を書いたと言います。長男やその友人たちから聞いた話もヒントに。性同一性障害を取り上げたのはニュースで見たから。社会の出来事に敏感だったことが、ドラマにリアリティーをもたらしたのです▼「言いたいことは全部、金八のセリフに込めた」と小山内さん。本紙で、大河ドラマ「徳川家康」に主演した滝田栄さんと対談し、憲法の話に。金八先生が憲法前文を読み上げて「君たちが出ていく世の中はこういう世の中なんだ」と語りかける場面について述懐しています▼太平洋戦争の折、横浜大空襲で死に遭遇する一歩手前までいった体験が。近年、戦争法反対のデモにも参加。イラクによるクウェート侵攻を機にヨルダンでボランティア活動を。カンボジアに学校をつくる取り組みも始めます▼享年94歳。子どもたちの命に深いまなざしを注ぎ続けた生涯でした。戦火は今も世界を覆い、毎日のように伝えられるガザの子らの悲報。小山内さんが健在ならどう行動したでしょうか。