2024年5月16日(木)
能登半島地震による被災者支援に関する申し入れ
5月15日 日本共産党国会議員団
能登半島地震の発災から4カ月半が経過したが、被災地では地震直後とまったく変わらない光景が至るところに存在している。多くの被災者が、再び能登で生きていきたいと強く願い、必死の努力を続けているものの、事実上の「自立」を迫られ、被災者を取り巻く環境は日を追うごとに厳しさを増している。
被災者に対するアンケート調査では2020年ごろからの相次ぐ地震による「多重被災で再建への気持ちがそがれた」という回答が約6割、「情けない」という回答も約2割に上っている。4カ月以上がたっても倒壊・焼失した家屋などのがれきが手つかずのまま放置されている現実は被災者をさらに追い込むことになりかねない。
被災者に能登で生きていく希望を示せるのかどうかが厳しく問われている。被災者の生活再建の現実をふまえた柔軟できめ細かな対策を講じること、そのために必要な知恵と力を集中することが求められており、以下の事項の速やかな実行を申し入れる。
記
1、ガレキ処理、被災家屋の公費解体が進んでおらず、生活と生業(なりわい)再建の大きな障害となっている。公費解体申請中の旅館の建物が住民の目の前で倒壊する事態も発生している。
上水道が復旧しても、下水道や宅地内配管の損傷等により実質的には水が使えないところが多数残されている。
なぜ4カ月半たってもこれらの事態が改善されないのか。いつまでに、どうやって改善しようとしているのか。液状化被害地域を含め現状と今後の見通しを被災者と共有すること。
2、地域の復興は計画制度を一方的に押し付けるのではなく、コミュニティーの再生を含めた被災者の生活・生業再建に係る障害を一つひとつ確実に打開することで、被災者自身による元の暮らしを取り戻すことを支援すること。
同時に、建物などの被害だけでなく、多重被災に苦しむ被災者をはじめ全ての被災者を対象にした相談・見守りなど心のケアを重視すること。
3、仮設住宅後の住まいの展望が持てるよう、意向調査など被災者の希望に寄り添った対応を行うこと。2007年や2023年の過去の能登半島における震災の際に実施された支援制度(これまで住んでいた土地での「能登ふるさと住宅」や自宅跡地を活用した戸建ての公営住宅、被災者生活再建支援金の支援対象の拡大や支援金の上乗せ)などを生かし、能登の風土・文化にふさわしい住宅再建への支援を抜本的に強化すること。
地域福祉推進支援臨時特例交付金による最大300万円の給付金については、石川県6市町に限定せず支援を拡大すること。あわせて、被災者生活再建支援法の支給限度額や対象を拡大すること。
4、仮設住宅への入居が始まったが、「家財道具なしで自分で買えと言われた」「電気やガスの契約も自分でやれと言われた」「建て付けがずさんで傾きがある」「防音機能が低く隣の音が聞こえる」「ベッドを置くと狭すぎる」などの声が寄せられており、入居者が安心して暮らすことができるよう必要な改善を行うこと。
仮設住宅に入居すると食事支援が打ち切られるケースが頻発し、「食糧難民」が生み出されている。熊本地震の際に行った政府備蓄米の活用など、避難者のニーズに応じた支援を行うこと。
5、1次避難所における食事の改善、プライバシー確保、ジェンダー視点での対応強化などをおこなうこと。2次避難所でも、北陸新幹線延伸を受けて「居づらい」などの声が増えており、心のケアも含めた支援強化が必要である。在宅、みなし仮設、親戚・知人宅への避難者の実態を把握し、支援を届けること。
6、大規模な海底隆起という未曽有の事態に直面している漁業、世界農業遺産の白米千枚田、輪島塗、珠洲焼、酒造など地場・伝統産業、観光業などへの支援制度の柔軟な運用を図り、きめ細かく支援を行うこと。漁港や農地などの被害の全貌を把握し、再建の見通しを早期に示すこと。不要不急の工事をやめて、能登半島のインフラ復旧に全力を尽くすこと。
7、奥能登において医療・介護施設や雇用が維持できるよう支援を強化すること。避難者を受け入れている周辺自治体の医療・介護施設に対しても人的財政的支援を行うこと。教育、保育の現場への支援を強めること。
8、被災自治体が被災地域の実情や特性に応じて生活・生業再建、地域の復興に被災者や住民と力を合わせて取り組むことができるよう、被災地域全体を対象にした復興基金の設置など人的財政的に支える体制を抜本的に強化すること。ボランティアの活動を最大限支援すること。被災者などから寄せられる要望や課題について、国の持つ知恵や力を被災地の現場で、被災自治体とともに解決することを重視すること。