2024年10月27日(日)
比に提供の巡視船、米合同演習に
日本政府黙認
非軍事原則を逸脱
フィリピンと中国が領有権を主張する南シナ海をめぐり、両国双方の船が衝突するなどの事件が同海で繰り返し起こり、緊張が高まっています。フィリピン沿岸警備隊によれば、8月31日、同海サビナ礁で同隊の「BRPテレサ・マグバヌア」に中国海警局の船が衝突しました。同船は日本が政府開発援助(ODA)で提供したものです。
日本政府は、2013年に「フィリピン沿岸警備隊海上安全対応能力強化事業」を開始。これまで44メートル級巡視船10隻、97メートル級大型巡視船2隻を同国に提供し、今年5月には大型巡視船5隻の追加提供で合意しています。日本政府は海難救助を含む海上法執行活動を行う比沿岸警備隊への供与であり、他国軍に対抗する性質のものではないとし、平和構築などを目的とするODAの「非軍事原則」には抵触しないと説明しています。
ところが、4月に同海で初めて行われ自衛隊もオブザーバー参加した米比の大規模軍事合同演習「バリカタン」に、日本供与の巡視船2隻が参加するも政府はそれを黙認。「非軍事原則」から逸脱し、中国を念頭にした米国の軍事包囲網の一端に加担しているのが実態です。
日本政府は既に、米国とともに「中国包囲網」を強化する狙いから、フィリピンへの軍事支援を強化しています。NGO団体「非戦ネット」運営委員の今井高樹氏は9月18日、国会内での会合で▽昨年11月、「防衛装備移転三原則」に基づく初の完成装備品輸出となる警戒管制レーダーを提供▽日本政府が他国の軍に武器を無償援助する枠組み(OSA)の初案件として、沿岸警備レーダー供与を決定▽今年7月、自衛隊と比軍が共同訓練などで相互に訪問しやすくする「部隊間協力円滑化協定(RAA)」を締結―などを報告し、「フィリピンとの防衛・治安協力をフルメニューで強化している」と批判しました。
在日フィリピン人などによる団体「ミグランテ・ジャパン」のロジャー・レイモンド氏は、RAAは中国を念頭にした米国によるインド太平洋地域での軍事施策を補完するものだと指摘。旧日本軍による侵略の歴史に触れ、「今後、自衛隊がフィリピンに送られ、武器弾薬が持ち込まれてしまう」との懸念を語りました。