2024年10月30日(水)
文化庁 アイヌ語 話し手育成へ
紙議員が再三要求、ついに本腰
文化庁がアイヌ語話者を育成する事業を新たに立ち上げることが分かりました。同庁は2025年度予算の概算要求に「危機言語話者の育成」(2000万円)を計上しています。
同庁の村瀬剛太国語課長は日本共産党の紙智子参院議員への説明(2日)で、「今までアイヌ語をスクール形式で学ぶ機会はあったが、新たに話し手の育成を重点において事業を進めたい」と述べました。
アイヌ語は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)によって、消滅の危機にある言語のなかでも「極めて深刻な危機にある言語」の一つに認定されており、母語として話せるアイヌの人は数人しかいないと言われています。
村瀬課長は「言語は文化の基盤だ。アイヌ語の話し手を育成したい」と説明。「アイヌ語は日常の生活で話さないと消えてしまう。アイヌ語の母語を話せる人の家に泊まり込んで勉強すると聞いているが、どのように進めるのか」との紙氏の質問に、村瀬課長は「アイヌ語の指導者のもとで集中的にアイヌ語だけを使って学ぶ機会をつくりたい」と答えました。
紙氏はこれまでアイヌ語話者の育成を何度も求めてきましたが、2021年4月19日の参院決算委員会では加藤勝信官房長官(当時)が「アイヌ施策推進法の趣旨にのっとり対応する」と答弁していました。今回の概算要求どおりの予算計上が実現すれば、ようやく話者の育成に政府が乗り出すことになります。
9月に北海道で行われた北欧の先住民サーミに学ぶ学習会では、アスラック・ホルンバルグ・サーミ評議会議長が講演し、「毎年十数名がサーミ言語の教育を受ける環境をつくり、受講者が400人を超えた。地元の学校でサーミ語の教育を受けることが可能になった」と紹介しました。
紙氏は「サーミの取り組みを参考に、アイヌ語話者の育成にも広げることが必要だ」と指摘しています。