2024年11月1日(金)
きょうの潮流
米国国旗にある50個の星は州の数を表しています。独立時の13個から連邦に州が加わるたびに星は増え、変更された回数が世界で最も多い国旗といわれます▼その映画の星条旗には二つの星しか記されていませんでした。カリフォルニア州とテキサス州。連邦政府に反旗を翻すために結成した同盟勢力の旗です。憲法を変えて3期目に就いた独裁的な大統領のもと、内戦に陥った米国を描いた「シビル・ウォー」です▼現在の米国社会が抱える激しい分断や対立、その先にある暴力の恐怖を伝えた映画は米国内で多くの観客を呼び込みました。これはフィクションなのか、現実なのかと▼偽情報や陰謀論がとびかい、互いの人格攻撃も強まり、分断が加速しているアメリカ。独自の言論空間や経済圏がつくられ、異なる価値観や考え方を排除する動きが広がっています。背景には格差が拡大し、不満や憤りがまん延する社会の姿があります▼目前に迫った大統領選では共和党のトランプ候補が盛んに個人攻撃をくり返しています。それがまた対立をあおり激化させることに。トランプ氏は相手勢力を「内なる敵」と呼び、軍隊を差し向ける考えを示している。民主党のハリス候補はそう非難しています▼「人々がコミュニケーションを取らなくなり、共有されてきた真実を失った時に何が起こるか。この映画は警鐘を鳴らす寓話(ぐうわ)です」。先の映画でジャーナリストの主人公を演じた俳優はいいます。私たちには共通点を模索し、対話する場が必要だと。