2024年11月2日(土)
きょうの潮流
声を震わせ、涙を流しながらの会見が、すべてを物語っていました。「女性として妻として母としての、私の尊厳、そして検事として尊厳を踏みにじられ、身も心もボロボロにされた」▼大阪地検のトップだった検事正から性的暴行を受けた女性は、家族との平穏な生活も、大切な仕事も、すべて壊されたと訴えました。罪に問われた北川健太郎被告は「争うことはしない」と起訴内容を認めています▼被害から告発までに要した長い時間からは、権力者だった被告からの脅しや巨大組織の論理が見え隠れします。事件の関係者である副検事が捜査情報を被告側に漏らし、被害者をおとしめたとして告訴されたことも被害の訴えの難しさを示しています▼告発が公になってから1週間がたとうとしているのに、検察側からはなんの反応も伝わってきません。北川被告は検事正在任中、森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題で当時の財務省幹部を不起訴にした人物です。何らかの意向が働いているのか▼「法の番人」であるはずの検察がみずから犯した罪に向き合わず、組織としての反省も示さないとは。おぞましい事件を徹底的に調べ、このような人を地検トップに登用した組織のあり方を根本から見直すべきではないか▼被害を受けた女性検事は、今も声を上げられずに苦しんでいる人や被害者に寄り添い、性犯罪を撲滅したいという思いから会見を開いたといいます。処罰されるべき人間が、処罰される社会になるようにと。