2024年11月3日(日)
きょうの潮流
地方に住む83歳の母の生きがいは二つの読書会です。運転免許を返納し、買い物も宅配に頼る日々、読書会には毎月1回ずつ計2回、バスで通います▼いずれも20年以上続く読書会のメンバーは女性ばかりの7人と4人。平均年齢は65歳と70歳。亡くなる人もあれば、新しく参加する人も。全員で決めた課題図書を読んでくるのが唯一の約束事。図書館の会議室を借り、かかる費用は本代だけです▼自分の関心外の本にも出合え、ヘーと驚く感想も聞けて世界が広がると言います。本は単に読むだけのものではなく、人と交流する喜びと居場所ももたらしてくれるようです▼例年、文化の日を中心にした2週間は読書週間です。戦後間もない1947年、「読書の力によって、平和な文化国家を創ろう」と、出版社や書店、図書館等が協力して始めました。しかし78回を迎えた今年、文化庁の2023年度「国語に関する世論調査」では、月に1冊も読書しない人が6割超という結果に▼読書会は本に親しむきっかけになるかもしれません。読書会「猫町倶楽部」を主宰する山本多津也さんは著書『読書会入門』で、読書会を生涯学習の場と位置付け、ルールとして他人の考えを否定しないことを挙げます。本の解釈に正解はなく、10人いれば10通りの読み方があり、人生に裏打ちされた意見を傾聴することで新たな自分を発見できる、と▼今年の読書週間の標語は「この一行に逢(あ)いにきた」。本の中へ仲間と一緒に分け入っていくのも楽しそうです。