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2024年11月3日(日)

主張

文化の日

創造し楽しめる社会の実現へ

 きょうは「文化の日」―。文化芸術基本法は、第2条3項で、文化・芸術を創造し享受することは「人々の生まれながらの権利」だと明記しています。

 2020年以降のコロナ禍で文化・芸術分野は大打撃をうけました。今も周期的な感染拡大が発生していますが、音楽や演劇などのライブ・エンターテインメントの活動は昨年、コロナ禍以前の水準を超えたとされています(ぴあ総研調査、6月発表)。しかし、国民が文化・芸術をつくり楽しむ機会は減少しています。

■減少する鑑賞機会

 文化庁の「文化に関する世論調査」(3月発表)によると、昨年1年間に「文化芸術イベントを外出を伴う形で鑑賞したことはありますか」という質問に対して「ある」と回答した人は45・3%で、前年度比6・9ポイントも減少しています。

 「ない」と回答した人に理由を聞くと、最も多いのは「関心がない」(23・6%)ですが、次いで「近所で公演や展覧会などが行われていない」(15・6%)「入場料・交通費など費用がかかりすぎる」(14・0%)です。つまり“遠くて高い”ことが人びとから文化・芸術を遠ざけています。

 日本の長時間労働も人びとから文化を楽しむ自由時間を奪っています。賃上げとセットで労働時間短縮を進めることが不可欠です。

 見過ごせないのは、子どもが「文化・芸術を外出を伴う形で鑑賞したことがあるか」という質問に対して「ない」が約6割に達し、世帯年収が低いほどその比率が高いことです。経済格差が子どもの芸術に接する機会の格差を生んでいます。

 そして「子どもの文化芸術体験に何が重要か」という質問には「学校における公演や展示などの鑑賞体験を充実させる」という回答が30・7%とトップを占めました。それだけに、すべての子どもが年1回以上芸術鑑賞できるよう国の施策の充実をはかることが求められます。15~18歳の若者の文化活動参加を直接支援するフランスの「カルチャーパス」なども参考に、若い世代が芸術に触れる機会を保障すべきです。

 「今、舞台芸術の危機が進行している!」―日本芸能実演家団体協議会(芸団協)が8月、緊急要望を政府に提出しました。

 伝統芸能の殿堂である国立劇場が昨年10月、再整備のため閉館しましたが、入札が不調に終わり再開のめどが立ちません。首都圏ではこの数年で、東京芸術劇場や東京文化会館など多くの劇場・ホールが改修等で休館またはその予定です。そのためホール不足が顕在化しています。芸団協は「多くの実演家・スタッフが表現の場を失いかねず、実演芸術の創造と継承、技術の継承と人材育成、文化産業の発展の危機に直面している」と警鐘を鳴らします。国立劇場の建て替えは全額を国が負担し、一刻も早い開場をめざすべきです。

■予算の大幅増額を

 問題の根本には日本の貧困な文化行政があります。国家予算に占める文化予算の割合は0・09%(1062億円)で、フランスの8分の1、韓国の12分の1にすぎません。大軍拡を中止し、大企業・富裕層優遇の税制を改め、その一部を回して文化予算の大幅増額を強く求めます。


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