2024年11月5日(火)
きょうの潮流
罪を犯してしまった人間の葛藤や弱さ。NHKドラマ「3000万」は、わずかな幸せをもとめた家族が泥沼にはまる姿を描いています。人生を激変させたのは「闇バイト」の存在でした▼言葉の軽さとは裏腹に手口は凶悪化し、社会に不安を広げている闇バイト。家に押し入り暴力をふるい、金品を奪う。相次ぐ強盗事件に高齢者世帯をはじめ、恐ろしさに震える夜が続いています▼手を染めていく若者が後を絶たないのは、SNSでの巧妙な勧誘があるからです。短時間で高収入が得られる、簡単な仕事などとうたい、犯罪の片棒を担がせる。握られた個人情報をたてに脅され、抜けられず深みにはまっていくことに▼経済的な格差が拡大し、金を稼ぐ=成功者ともてはやされる世の中に募る不公平感。まじめに働いても報われない絶望感。犯罪社会学が専門の廣末登さんは、そうした今の日本社会の構造が闇バイトをうみだしていると同名の著書で指摘します▼実際は犯罪の果実を手にするのは首謀者で、あとはその手足になるだけ。一生罪の重さと向き合わなければならないことにも。新たな加害者をつくらせないためには、危険性の周知をはじめ、社会全体で闇バイト対策を講じる必要があると廣末さん▼人をだまし、あるいは暴力をふるってまで金品を得ようとする卑劣な犯罪。そこには世代間の分断や対立をあおる風潮や政治の影響も感じさせます。だれもが安心して生きられる社会を。それが暗闇の犯罪をなくすことにつながります。