2024年11月5日(火)
主張
女性差別撤廃勧告
ジェンダー平等後進国返上を
男女間の不平等を示すジェンダー・ギャップ指数が146カ国中118位の日本。ギャップ解消に向けた政府の取り組みはどうなのか―国連の女性差別撤廃委員会は日本について8年ぶりの審査を行い10月29日、政府に対して多岐にわたる政策の後れを指摘する「総括所見」を出しました。
■夫婦同姓強制の国
選択的夫婦別姓の早期導入を求める勧告は4度目です。委員会は「これまでの勧告に対し何らの行動もとられていない」といら立ちをにじませ、2年以内の追加報告を求めました。
日本がいまや世界で唯一の“夫婦同姓強制の国”であることは法務省自身が認めており、総選挙では自民党以外の多くの党が制度導入を公約しました。国会はいまこそ制度実現に動くべきです。日本共産党はそのために全力を尽くします。
国内で救済されなかった差別を直接、国連に通報できる個人通報制度と調査制度を使えるようにする選択議定書の批准は、条約に効力をもたせるために不可欠です。これについても「検討中」を続ける日本政府に対し「時間がかかりすぎている」と強く批判し、早期批准を勧告しました。
男女賃金格差が依然として大きく、同一価値労働同一賃金の原則が実施されていない問題も厳しく指摘。間接差別となる要件の拡大、女性の正規雇用を増やすこと、賃金格差開示を中小企業に広げることなどを勧告しています。今回、初めて沖縄の米軍関係者による性暴力が取り上げられ、性暴力防止、加害者の処罰、被害者保護と支援体制の充実などが勧告されたことも特筆されます。
リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関わる健康と権利)に関する勧告も多岐にわたりました。勧告された、刑法堕胎罪や中絶の配偶者同意要件の撤廃、中絶薬を含む安全な中絶へのアクセス改善、最高裁判決に基づいて性別変更における生殖不能手術要件の撤廃など、一日も早く実現するべきです。
皇位継承が「男系男子」に限られている皇室典範改正の勧告に政府は抗議し削除を求めましたが、委員会は日本に限らず、同じ制度の国に同様の提言を行ってきました。日本共産党は、多様な性をもつ人々によって構成されている日本国民の統合の「象徴」である天皇を男性に限定する合理的理由はなく、「女性・女系天皇」を認めることに賛成の立場を表明しています。
■根幹に関わる指摘
日本への勧告の特徴は条約締結国の義務の根幹に関わる指摘が多いことです。差別を包括的に定義する法律がなく、独立した国内人権機関や女性問題についての専門の省がないこと、司法に条約が生かされていないと批判されています。
同時に、条約の中心理念である男女の役割分担、ジェンダー・ステレオタイプ(固定観念)を払拭する取り組みの全面的な強化の必要性を強く促しています。
条約の批准から40年近くたってなお、締約国としての義務の根幹にかかわる問題を指摘され続けていることを重く受け止めるべきです。条約の全面実施に向けて今こそ総括所見をいかし、「ジェンダー平等後進国」を返上する政治の責任が問われています。