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2024年11月8日(金)

主張

アメリカ大統領選

「自国第一」にどう向き合うか

 米大統領選で、共和党のトランプ前大統領が8年ぶりに当選したことで、“自国第一”を掲げる米国に世界は再び直面することになりました。大国の身勝手な行動で国際社会の分断がすすむなか、なりふり構わず自国の利益を優先させることを国民にアピールし、返り咲いたトランプ政権にどう向き合うのか、日本外交も直ちに問われます。

■深刻な現状に審判

 選挙結果は、バイデン政権4年間への厳しい審判となりました。トランプ氏を再び押し上げた主要因は、同国で急激に進んできた物価高騰による国民の生活苦です。異常な貧富の格差の上にのしかかる記録的な物価高は、現政権に対する強烈な不満を生みました。

 バイデン氏は就任当初、新型コロナ危機からの立て直しに加え、大企業・富裕層増税で大型財政出動を支え、格差や人種差別という構造的問題に取り組むと公約し、注目されました。

 しかし、同氏の看板政策は、身内の造反を含む議会の反対で阻まれました。看板倒れの生活支援、物価に追いつかない賃金という現実を前に、さまざまな運動が広がり、近年ない規模で労働者はストライキに立ち上がりました。

 その間、政治への不信や不満は米社会の分断をいっそう鋭くしてきました。議会襲撃を扇動した容疑で起訴中であるトランプ氏になお支持が集まる背景には、米社会の矛盾があります。

 一方、2期目にトランプ氏が直面するのは、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国が存在感を増し、大国の身勝手にますます厳しい目が注がれる世界です。自国優先による分断や同盟重視によるブロック化ではなく、国連憲章と国際法に基づく、健全なリーダーシップが強く求められています。

 トランプ氏は、ウクライナ戦争もガザ紛争も早期終結を主張しています。問われるのは「国際秩序」に対する姿勢です。

 昨年10月のガザ紛争の激化以来、停戦を一方では唱えながらも、イスラエル擁護と武器供与を続ける米政府の偽善は、大国の指導力を失墜させてきました。トランプ氏は現政権以上にイスラエル擁護の姿勢を強調しています。

 ウクライナでの戦争で、米国やその同盟国はロシアの国際法違反を問題にしてきました。ロシアによる侵略という不正の是正なしにウクライナ問題の根本解決はありません。しかし、ガザや中東での米国の二重基準の対応に厳しい目が注がれており、大統領選にも影響が及びました。

■問われる日本政府

 「日米同盟」を絶対視する外交のままでいいのかが、日本には厳しく問われることになります。トランプ氏の持論は、“米国は同盟国から利用されてきた”というものです。政権1期目には、経済や安全保障面での負担増を同盟国に強硬に求めました。

 石破茂首相は「同盟の強化は政権の最優先事項」と述べ、米軍と一体化した軍拡路線を踏襲しています。“日米同盟絶対”の路線では、軍事対軍事の悪循環や世界のブロック化、際限のない軍拡に陥ります。軍事一辺倒ではなく、国連憲章と国際法に立脚した外交と国際協力こそが必要です。


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