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2024年11月9日(土)

主張

検事正の性犯罪

勇気の訴え受け徹底検証せよ

 処罰されるべき犯罪者が、公益の代表者として犯罪を告発し法の裁きを求めるのが役割である検察の地検トップの地位にいたというのは、恐るべきことと言わざるを得ません。

 大阪地検の元検事正(2019年退職)が、在職中の18年、酒に酔って意識もうろう状態の部下の女性検事に性的暴行を加え、準強制性交罪(心神喪失や抗拒不能に乗じ性交等をした)で訴えられた事件の初公判が大阪地裁で開かれました(10月25日)。被告は公判で起訴事実を認めました。

■検察組織の問題点

 現職検事である被害者は公判後に会見を開いて事件の経過を語り、事件後6年間の苦しみと性犯罪を撲滅したいという思いを嗚咽(おえつ)をこらえながら訴えました。

 元検事正は、飲食店での同僚らとの懇親会後、酔って歩けない状態でタクシーに乗せられ帰ろうとする女性の車に強引に乗り込み自身の官舎に向かわせ、性的暴行を加えました。

 見知らぬ場所で意識が戻った被害者は、恐怖と驚愕(きょうがく)、絶望で凍り付き、抵抗すれば殺されると感じたと言います。さらに「公にすれば死ぬ」「検事総長以下が辞職に追い込まれ…組織として立ちいかなくなる」と脅され5年余り被害申告できなかったとのべました。

 正義感はおろか倫理観のかけらもなく、他者の尊厳を平然と踏みにじる人権意識の欠如した人物がなぜ重用されてきたのか。思えば、安倍晋三元首相が強引に検事総長にしようとしたとされる元東京高検検事長も、コロナ禍での賭けマージャン発覚で辞職という人物でした。検察の人材登用のあり方が厳しく問われます。

 さらに、被害者は会見で、検察内での二次被害も明らかにしました。覚悟を持って告発した後、同僚の副検事が元検事正に捜査情報を漏らしたうえ、「被害者は同意していた」などのうわさを流し、信じる者も出たと言います。それを検察庁に何度も訴えたのに対し、検察庁は放置し、被害者を傷つけ孤立させました。

 最高検を含め検察庁はこの訴えを厳正に捜査、検証し、事実なら謝罪し、関係者を処分・処罰し、二度と起きないよう徹底すべきです。

■被害正しく理解を

 被害者が会見で勇気をもって自身の被害を語ったのは、声をあげられない多くの被害者に代わり、被害の実態、性犯罪の本質を理解してもらい性犯罪をなくしたいという思いからです。

 性暴力事件では、加害者が「同意があると思った」などと争う例がしばしばあります。23年12月に起きた沖縄の米兵による少女暴行事件でも加害者はそれを争い、裁判では加害者側が被害者に被害の詳細や抵抗の有無を問いただしました。

 検事として性犯罪に取り組んできた今回の事件の被害者は、取り調べなどで被害を話すことは被害を再体験することだとその苦しみを訴え、関係者はそれを理解すべきだと訴えました。

 被害者に寄り添う検察官がいる一方、通り一遍で不起訴とする検事も少なくないとのべ、司法関係者が正しく事実認定しなければ、勇気を振り絞って声をあげた被害者をさらに傷つけ、性犯罪を許すことになると訴えました。捜査・司法関係者はこの重い訴えを正面から受け止めるべきです。


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