2024年11月21日(木)
大阪市 生活保護利用者「就職サポート」
半年で離職7割超
パソナなど大手派遣のもうけ口に
大阪市がパソナなどの大手派遣企業に民間委託し、生活保護利用者らに就職支援を行う「総合就職サポート事業」―。支援で就職した人の8割超が不安定な非正規雇用で、7割超が半年で離職していることがわかりました。生活保護利用者が就職し、保護廃止となった場合、1人当たり6万円がパソナに「成果報酬」として払われることとあわせて、生活保護で企業をもうけさせただけだと批判の声が上がっています。(速水大地)
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同事業は、各行政区の保健福祉センターに派遣されたパソナ職員が、利用者への就職アドバイスを行い、パソナ保有の求人を紹介。2023年度に支援を受けた2699人中1716人が就職したものの、正規雇用は265人(15%)で、1451人(85%)が非正規雇用です。
離職も非常に多く、3カ月以内の離職率は60%で1028人(正規178人/非正規850人)。6カ月以内では76%の1299人(正規204人/非正規1095人)が離職しています。
保護開始を盾に
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失業で困窮して生活保護を申請した30代男性は「再スタートを決めて最後のライフライン(生活保護)に頼りました。派遣生活で疲れ果て、安定した正規雇用の職をじっくり探したいと伝えたのに、パソナの派遣職員に『何でもいいから』と言われました」と絶望。「このままでは生活保護を開始できないと言われ、生活できないので、希望とは違う会社にも応募。動物が好きでペット関係の仕事はないかと聞くと、『“屠殺(とさつ)場”ならある』と言われショックでした」と話します。
全大阪生活と健康を守る会の大口耕吉郎会長は「『成果』に応じて『報酬』が上がり下がりする仕組みは、生活保護利用者への管理強化や、意に反する強引な就職支援につながりかねない」と警告。本来は指導権限のない民間職員が「求職活動をしなければ保護が受けられなくなる」などの言葉で、利用者に「指導」を行う違法な事例も報告されていると指摘します。
民間任せの維新
23年度の委託料は計約6億2422万円、加算額は約1440万円。24年度から加算方法が変わり、生活保護利用者が同事業の支援で就職した場合、保護廃止とならなくても3カ月分の就労収入認定額の5%が加算され、廃止の場合は2倍の10%が加算されます。
大口氏は「就職サポートの支援ミスマッチは数字を見れば明らかで、ただの大手派遣企業のもうけ口になっている」と福祉業務にまで民間委託を拡大させる維新市政を批判。「大阪市は維新市政のもとで稼働年齢層(15~64歳)を違法に生活保護から排除して自立の機会を奪い、20代女性が申請を再三断られた末に死亡した事件も起きた。民間任せのムダな事業は見直し、一人ひとりに寄り添えるよう、人員不足の現場に専門資格を持つケースワーカーを増員すべきです」と指摘します。